研修やコンプライアンスの動画には、伝えなければならない項目と、法務や人事が確認した文言があります。広告のように短く削るわけにはいかず、5分、10分と長くなりがちです。
その長い動画を最後まで見てもらうために、制作の現場ではこれまで、チャプターを細かく区切る、図を大きく動かす、クイズをはさむといった「飽きさせない」工夫を重ねてきました。
AIで物語の場面を手頃な費用で作れるようになり、ここにもう一つの方法が加わっています。テレビの再現ドラマのように、話の流れで内容を分かってもらう研修動画です。
これまでの工夫は「飽きさせない」ためのものだった
研修動画を見てもらう工夫として、よく使われてきたのは次の三つです。
一つ目は、チャプターを短く区切る方法です。10分の動画を2〜3分ずつに分け、1本ずつ最後まで見てもらうことを積み重ねます。受講の記録が取れるシステムなら、どこまで進んだかも分かります。
二つ目は、図やモーショングラフィックを大きく動かす方法です。ナレーションだけが続くと画面が単調になるので、数字や手順を動く図で見せ、目が離れないようにします。
三つ目は、途中にクイズをはさむ方法です。見ている人に答えを選んでもらうことで、流し見をしにくくします。
どれも、注意をつなぎとめるための工夫です。いまも研修動画の土台として役に立っていて、なくす必要はありません。
ただ、研修で本当に伝えたいのは「規程を覚えている」ことより、「迷ったときに、どう動くか」です。たとえば内部通報の研修なら、窓口の電話番号を覚えてもらうことより、上司に口止めされたときに窓口を思い出してもらうことのほうが大切です。
チャプターやクイズで確かめられるのは、規程の内容を覚えたかどうかまでです。言い出しにくい空気や、断りにくい頼まれ方といった「迷う場面」は、図や文字ではなかなか伝わりません。
物語のほうが分かりやすいことは、前から知られていた
分かりやすい例が、テレビの再現ドラマです。法律相談の番組では、条文を読み上げる前に、近所の人とのもめごとや、職場での行き違いが短いドラマで流れます。見ている人は「自分ならどうするか」と考えながら話を追い、そのあとに出てくる弁護士の説明を、さっきの場面への答えとして受け取ります。
研修動画でも、再現ドラマにすると、場面を見せてから規程を説明する順番で伝えられます。
内部通報の研修なら、これまでは「不正を見つけたら、内部通報窓口に連絡しましょう」というナレーションが中心でした。再現ドラマにすると、たとえば主人公が上司の不正に気づいてしまい、その上司から「この件は内密に」と口止めされ、言い出せずに数日を過ごす場面から始めます。見ている人は、主人公の迷いを自分のことのように感じたところで、窓口があること、相談しても不利な扱いを受けないことを知ります。規程の説明が、見ている人がすでに持っている疑問への答えとして届きます。
ナレーションと再現ドラマでは、伝える順番と、見た人に残るものが変わる
覚え方も変わります。スライドで読んだ文言は、時間がたつと忘れてしまいます。物語で見た場面は、似たことが職場で起きたときに「あのドラマと同じだ」と思い出すきっかけになりやすくなります。研修で残したいのは、この「思い出すきっかけ」です。
研修を企画する担当の方も、制作会社も、物語のほうが伝わることは前から分かっていました。それでも、研修動画の多くはスライドとナレーションで作られてきました。
それでも研修で物語が選ばれにくかった理由
いちばんの理由は費用です。
ドラマにするには、脚本、出演者、撮影場所、撮影スタッフ、撮影の日数が必要になります。アニメにする場合も、登場人物の設定を作り、場面ごとに人の手で絵を動かします。AI登場以前は、数分を超えるドラマ仕立ての研修動画で500万円以上、内容によっては1000万円以上かかることもありました。
金額の大きさに加えて、社内で説明しにくいという事情もありました。たとえばハラスメント防止の研修動画なら、伝えたいのは規程の中身です。ところが見積もりを開くと、俳優の出演料やロケ地の使用料が大半を占めています。規程とは関係がないように見える費用が並ぶので、決裁する側から「スライドとナレーションで足りるのでは」と言われると、担当の方は反論しにくくなります。
その結果、多くの研修動画は、スライドとナレーションに動く図を組み合わせた形で作られてきました。チャプター分けやクイズといった工夫は、この予算の中で、少しでも最後まで見てもらうために重ねられてきた方法です。
AIで変わったのは、物語の場面を作る費用
AIで安くなったのは、物語の「場面」を作る部分です。オフィスや会議室、工場の現場といった背景、主人公が迷う再現の場面、実際には撮影しにくい不正やトラブルの場面を、出演者や撮影場所を用意せずに作れます。たとえば上司の不正に気づく場面なら、これまでは役者を呼び、オフィスを借りて撮影していました。いまは登場人物の見た目と背景をAIで作り、セリフとナレーションを人が書いて組み立てます。
AI登場の前と後で大きく変わったのは、物語の場面を作る費用。企画とシナリオにかける手間は変わらない
費用の目安も変わりました。AI登場以前は数分を超えるドラマで500万円以上かかっていたものが、いまは3〜5分の研修動画を、企画、シナリオ、ナレーションまで含めて200万円から(税別)ご案内できます。これは、モーションアニメで作る研修動画とほぼ同じ費用の目安です。物語にするかどうかを、予算ではなく研修の内容で選べるようになりました。すでにある研修動画に、AIで作った再現の場面だけを差し込む方法もあり、こちらは1場面あたり数万円から(税別)です。登場人物の設定に、別途費用がかかる場合があります。
提案の進め方も変わりました。これまでは、企画書の文字と簡単な絵コンテだけで、完成した映像を想像してもらうしかありませんでした。いまは提案の段階で、完成したときの雰囲気が分かるイメージ画をお見せできます。決裁する方が「この予算で、こういう映像ができる」と目で確かめられるので、社内で予算を相談するときの説明にも使えます。
一方で、AIに任せられないところも残ります。物語の中で規程そのものを正しく表しているか、物語と規程が正しく結びついているかを、組み立てて確かめる部分です。たとえば内部通報の研修で、話を盛り上げようとして、窓口に相談した主人公が職場で浮いてしまう展開にすると、「相談しても不利な扱いを受けない」という規程と食い違ってしまいます。場面を作るのはAIでも、どの場面で規程のどの項目を伝えるかを決め、仕上がりが規程とずれていないかを確かめるのは人の役目です。
物語の形はひとつではない
物語で伝える研修動画は、再現ドラマだけではありません。スマービーでこれまでに作った研修・周知の動画から、形の違う例をご紹介します。
ニュース番組の特集コーナーにする
不動産ディベロッパーのコンプライアンス啓もう動画では、現実のニュース番組にある「特集コーナー」の形を借りました。キャスターがスタジオで話題を紹介し、取材映像のように再現の場面へ切り替わります。ニュースなので、キャスターが規程の内容を読み上げても不自然になりません。
実写でこの形にしようとすると、スタジオのセットと再現場面の撮影が別々に必要になり、費用が大きくふくらみます。この動画は約5分のアニメで、スタジオや再現場面の背景はAIで作り、登場人物はアニメーターが描きました。5分のあいだ登場人物の顔や服装がぶれないよう、人の手で描く部分を残しています。
予告編と本編のギャップで、もう一度見てもらう
保険代理店向けの保険商品の研修では、「そもそも最後まで見てもらえない」というご相談をいただきました。そこで、研修の前に社内へ流す周知用の動画を恋愛ドラマ風の予告編にし、研修の本編はコメディにしました。予告から想像した話と本編がまったく違うので、見た人のあいだで話題になり、本編に細かく仕込んだ伏線を確かめるために、何度も見てもらえました。
研修動画は、再生ボタンを押す前の「見てみたい」という気持ちでも差がつきます。こちらは実写ドラマで制作した例です。
キャラクターの掛け合いとランキングで進める
労働組合の活動を紹介する動画では、新しく加入した30代までの職員に向けて、組合活動のよいところを伝えたいというご要望でした。若い世代になじみのある「ゆっくり動画」のように、キャラクター同士の掛け合いで進むコント仕立てにし、活動の内容をランキング発表の形で紹介しています。
説明が長くなる内容でも、次は何位かを待つ気持ちと、掛け合いのテンポで見続けてもらいやすくなります。キャラクターと画面のグラフィックはすべて描き起こし、それぞれに声優が声の演技をつけました。
AIで連続ドラマを作る
「アンラックコイン」は、呪いのコインをめぐる因果応報の話を、AIで作った縦型のショートドラマです。研修動画ではありませんが、同じ登場人物で話数を重ねられることを確かめた例です。たとえば月に1話ずつ配信するコンプライアンスのドラマのように、研修を連続ものにする企画にもつなげられます。
物語が内容を誤解させないか
形を選ぶときに大切なのは、研修の内容と見る場面に合った表現になっているかです。
たとえばハラスメントの研修で、加害者役の演技を大げさにしすぎると、怖がらせたいのか笑わせたいのか、見ている人には分からなくなります。「あそこまでひどくなければ大丈夫」と受け取られてしまえば、伝えたかった規程とは逆の印象が残ります。題材によっては、笑いの要素を混ぜること自体がふさわしくない場合もあります。
保険商品の研修や組合活動の紹介でコメディやコントの形を選べたのは、覚えてほしい中身に対して、笑いが誤解を生まなかったからです。物語は内容を伝えるための手段なので、どの形を選ぶときも「この物語を見た人が、規程を正しく受け取れるか」を基準にします。
相見積もりに「変わり種」を1社まぜる
研修動画の見積もりを何社かに頼むと、届く案はスライドとナレーションに動く図を組み合わせた、よく似た形になりがちです。同じ形の案どうしでは、比べる点が、金額と画面の見た目に寄りがちです。
物語で伝える研修動画は、何の話にするかで仕上がりが大きく変わります。そのため、定番の案と並べて比べてみると、自社の研修内容に物語が合うのか、どんな切り口なら社員に届きそうかが見えてきます。
スマービーでは、相見積もりの1社としてのご相談を歓迎しています。定番の案と並べたときに切り口の違いが分かる企画を、イメージ画を添えてお持ちします。採用に至らなくても、アイデアの一部を社内の検討に使っていただければうれしいです。
広告代理店を通したコンペなど、提案の段階で完成に近い映像を見せたい場合は、Vコンテプランでのご相談も歓迎しています。生成AIで30秒分のビデオコンテ(動きのある絵コンテ)を無償でお作りし、受注が決まってから正式にご発注いただく仕組みです。
研修・社内周知の動画のご相談
相見積もりの1社としてのお声がけも歓迎します。
企画のたたき台とイメージ画をお持ちして、お打ち合わせします。








