よくある質問 筆頭の「動画の長さ」
動画を制作される方からよく相談されることの一つに「制作する動画の長さ」があります。
結論、見せる相手がどのような人でどのような内容を求めているか、またどういった形式の動画をどういったシチュエーションで視聴するのかなど、色々な要因により最適な長さが変わってきます。至極当然なことながら、このような前提を考慮して動画の長さを考えることは、全ての動画制作において非常に重要なことです。
冒頭から問題放棄気味になっていますが、今回は色々な視点やデータから最適な動画の長さについてのヒントを一緒に探っていきたいと思います。
なお、Daft PunkのPVやスターウォーズの映画のように、お金を払ってでも見る人がわんさかいるようなコンテンツではなく、企業が売り込みたい商品やサービスのオンライン動画を視聴者へ届けるという前提でデータを見ていければと思います。
そもそも、人間の集中力の限界は?
集中力の持続時間には諸説ありますが、一般的には90分が限界と言われています(勿論、その人のコンディションや能力、環境などによっても大きく左右されます)。
更にその中で波が15分周期で訪れるといわれており、これが1つの大きな壁になります。
ちなみに、野球の試合は約3時間、サッカーの試合や映画は約2時間、大学の授業の1コマは90分、小学校の授業の1コマは45分といったところです。
小さい子はまだ未発達な部分があり、集中の波に乗りにくいため、短めに設定されているとのことです。
こういった視点で色々な時間を眺めてみると、色々な発見があるのではないでしょうか。
ハウツーや研修ビデオ・学習コンテンツなど、長い動画を制作する必要がある場合には、こういった時間の単位を意識してしてみると良いかもしれません。
オンライン動画の視聴データ
今回は、企業が売り込みたい商品やサービスのオンライン動画を視聴者へ届けるという前提ですので、もう少し細かい単位で実際のデータを見ていきたいと思います。
海外では様々な貴重なデータが公開されていますので、掻い摘んでいくつかご紹介させていただきます。
【データ1.動画の時間と離脱率のグラフ】
Visible MEASURES(September 29, 2010)
5分未満の映像に絞り4000万以上の動画を元にVisible MEASURESが調査した結果では、上記のグラフの通り、最初の10秒以内で視聴者の20%、30秒で33%、60秒で44%、90秒ともなると半分以上が離脱するという結果が出ています。
これはただ単に短い動画を作ることが良いということではありません。YouTubeもクリエイターハンドブックで冒頭の15秒を大事にしなさい!と言っていますが、視聴開始直後の時間帯は動画広告において非常に重要なポイントであり、動画の尺に関わらず、序盤で重要なメッセージを伝え離脱を減らし、視聴率を維持する工夫が必要になります。この部分に関しては、次のデータでより詳しく見てみましょう。
【データ2.一分強の動画広告の離脱率のグラフ】
Vidyard(December 4, 2013)
上の図は、Vidyardのとあるセールス動画(動画尺:1分6秒)の離脱率を示していますが、7秒経過時点で約20%が離脱しており、最後まで見た視聴者は65%程度になっています。
1分程度の短い動画クリップであっても、開始直後の離脱は大きく、やはり序盤で興味を引きつけるような演出や仕掛けが重要であることが分かります。
【データ3.シェアが多かった動画広告の平均尺】
- 01位から10位の動画 4分11秒 (計2,513秒)※Kony 2012”を除く
- 11位から20位の動画 2分30秒 (計1,501秒)
- 21位から30位の動画 3分05秒 (計1,849秒)
- 31位から40位の動画 2分57秒 (計1,770秒)
- 41位から50位の動画 1分45秒 (計1,049秒)
- 01位から50位の動画 2分54秒(計8,682秒)※Kony 2012”を除く
REEL SEO(November, 2010)*Unruly Media調べ
上記は世界の動画広告でシェアが多かった上位50の動画の長さをUnruly Mediaが調べたものです。
これを見ると、実際動画の世界では大量の離脱が発生するであろう2分を超える動画が拡散されていることが分かるはずです。ただしこれは激しい競争を勝ち抜いたごく一部の優良コンテンツであることを忘れてはいけません。
また、上位に位置しているものの中には、直接的な商品広告だけではなく、ドキュメンタリータッチのブランディング広告なども含まれていることが考えられるため、これだけを指標にして動画の長さを決定することは危険といえます。
2分を超えるような動画広告を制作する場合は、オンラインで拡散されている類似コンテンツを探して、どのように視聴者へフックをかけているのか、どのようなシナリオ構成になっているのかを参考にするのが良いでしょう。
【データ4.動画広告の平均尺の推移】
comScore(2013)
ComScoreが発表したセールス動画の平均的な長さの推移を見てみると、2012年初頭から7分近くまで上昇し、2012年末から2013年の半ばまでは5分程度に落ち着いていることが分かります。
【データ1.動画の時間と離脱率のグラフ】で、「2分を超える長い動画は悪」というイメージがついている方もいるかもしれませんが、【データ3.シェアが多かった動画広告の平均尺】以外にも、5分を超える尺の動画広告が実際に多く存在していることを示すデータが公開されています。
【データ5.動画広告がどこまで再生されたかとCTRのグラフ】
VIDEO HUB(August, 2013)
こちらは、動画広告がどこまで再生されたか(棒グラフ部分)と、CTR(折れ線部分)を表したグラフになります。これを見ると、動画の長さと再生された動画時間の割合、動画の長さとCTRは共に相関がないことが分かります。
今までのデータとは視点が異なり、非常に興味深いデータです。
まとめ
[動画で重要視すべきは尺よりも、視聴率を維持するための動画の設計]
[どんな尺の動画でも見本はある まずはその成功例を調べて見習うべき]
冒頭に書いたように、最適な動画の長さというものはターゲット・クリエイティブ・達成したい目的などによって大きく変化してくるため唯一無二な答えは存在しません。
誰かに吹き込まれた根拠のない先入観は捨てて、良い動画を研究し続けることと、様々なシチュエーションでA/Bテストなどトライアンドエラーを繰り返すことが、最適な解を導く成功への近道です。
参考:
https://www.vidyard.com/blog/video-marketing-to-capture-attention-faster/
https://www.visiblemeasures.com/2010/09/29/benchmarking-viewer-abandonment-in-online-video/
https://www.reelseo.com/length-youtube-video/
https://tremorvideo.com/wp-content/uploads/2014/04/Video-Insights-Report-August-2013.pdf/
