動画制作の修正はどう進む?粗編集・初稿の確認点と、修正の伝え方
動画制作は、途中の映像を確認し、必要な修正を重ねながら完成へ近づけていきます。その過程でよく使われるのが、「粗編集」「初稿」「修正1回」といった言葉です。
粗編集(あらへん、略して「粗編」)は構成を確認するための映像、初稿は必要な要素を一通り入れた「いったんの完成品」として提出されることが多い映像です。ただし、名称や提出の仕方には、制作会社や案件によって幅があります。粗編集を提出しない案件もあり、修正回数も、指摘した項目の数ではなく、発注側の意見をまとめて返し、修正版が提出されるまでを「1回」と数えるケースがあります。言葉の意味を一律に決めるのではなく、「今回の案件ではどこまでを指すのか」を制作会社と共有しておくと、各段階で確認する内容を判断しやすくなります。
この記事では、粗編集と初稿で確認する内容の違い、修正回数の考え方、編集で直せる変更とAIでの作り直しや撮り直しが必要になる変更の違い、そして「なんか違う」と感じたときの伝え方を紹介します。
動画は「構成・表現・最終確認」の順に見ていく
動画を確認するときは、細かな装飾から見るのではなく、構成、表現、最終確認の順に進めると、どの段階で何を伝えるべきか判断しやすくなります。
名称や提出の仕方には制作会社ごとの違いがあり、すべての案件が同じ工程を通るわけでもありません。ただし、確認する目的を段階ごとに分けておくと、意見を出す時期を判断しやすくなります。
工程全体の流れは、次の記事でも説明しています。
動画制作の進め方完全ガイド|実写・アニメ・AI動画の工程と選び方
動画制作の進め方を、実写・アニメ・AI動画のパターンで横並びに整理。費用・期間・向いている用途の比較から、問い合わせ〜納...
粗編集では、順番とおおまかな尺を決める
粗編集は、動画の構成を確認するための映像です。撮影素材、画像、仮の映像などを並べ、話の順番と全体のおおまかな尺を決めていきます。
この段階で確認したいのは、主に次の内容です。
- 情報が分かりやすい順番で並んでいるか
- 必要な説明が不足していないか
- 同じ内容が重なっていないか
- 各場面の長さに違和感がないか
- 全体がおおよその予定尺に収まっているか
- 使用する映像や画像が内容に合っているか
テロップの細かな見せ方、色、動き、BGM、効果音などは、粗編集の確認後に加えていくことがあります。そのため、粗編集は完成品ではありません。構成と尺が決まった後に順番を大きく変えると、その後に加えたテロップや音にも変更が及ぶ可能性があります。構成に関する意見は、この段階で伝えると進めやすくなります。
なお、粗編集はすべての案件で提出するものではありません。構成が短い動画や、グラフィックボードで場面ごとの情報と見せ方を確認できるモーションアニメーションでは、省くことがあります。反対に、15秒や30秒のCMのように短くても秒単位の構成が重要な場合は、絵コンテを仮の映像としてつないだVコン(ビデオコンテ)にタイムコードを入れ、場面が始まる秒数や、ナレーションと映像が切り替わるタイミングを確認することがあります。
提出物の形式が違っても、完成制作へ進む前に「何を、どの順番で、何秒見せるか」を確認する役割は共通しています。制作開始時に、構成と尺をどの資料で確認する予定なのかを聞いておくと分かりやすくなります。
初稿では、制作会社が与件をどう解釈したかを見る
粗編集で構成を確認した後、テロップ、ナレーション、BGM、色、動きなどを加えていきます。こうして必要な要素を一通り反映し、制作会社から提出する映像が初稿です。多くの案件で「いったんの完成品」として扱われます。
初稿には、事前に共有した目的や条件を、制作会社がどう受け取り、どう映像にしたかが表れます。ここでは、テロップや色だけを個別に見るのではなく、全体にどう反映されているかを確認します。
- 想定している視聴者に合った映像になっているか
- 最も伝えたい内容が分かりやすいか
- 事前に共有した雰囲気が表現されているか
- ナレーションと映像の組み合わせに違和感がないか
- テロップの情報量や読みやすさは適切か
- BGMや効果音が映像の内容に合っているか
- 商品名、会社名、数値などに誤りがないか
十分に話し合っていても、言葉から思い浮かべる映像が完全に同じになるとは限りません。制作会社が解釈した「落ち着いた映像」と、発注側が想定していた「落ち着いた映像」に差が出ることもあります。初稿の確認は、その差を見つける機会でもあります。
一方、スケジュールの都合により、一部の作業が初稿の提出までに間に合わない場合もあります。映像や画像が仮素材のままである、ナレーションが仮音声である、BGMや効果音の調整が残っている、といった状態です。この場合は、制作会社から「どの部分が未完成なのか」「次の稿までに何を反映するのか」を提出時に伝えます。
あらかじめ次稿までに制作すると伝えていた部分は、発注側の指摘によって変更する「修正」ではなく、もともと予定していた制作作業の続きです。初稿を確認するときは、内容を次の3つに分けて考えると分かりやすくなります。
- 次稿までに制作会社が完成させる予定の部分
- 発注側との認識の差によって修正する部分
- 初稿を見た後に新しく追加したい部分
この3つは、必要な作業や修正回数への含まれ方が異なる場合があります。提出時に分けて共有しておくと、予定していた作業が修正として数えられる、といった行き違いを避けやすくなります。
第2稿以降では、修正結果と未完成部分を見る
第2稿以降では、伝えた修正指示がどのように反映されたかを確認します。同時に、初稿で未完成だった部分が予定どおり完成しているかも見ます。
- 修正を依頼した箇所が意図した内容になっているか
- 修正によって別の箇所に影響が出ていないか
- 未完成だった映像や音が追加されているか
- 誤字や事実関係の誤りがないか
- 音量や表示時間に違和感がないか
- ロゴや商品名が正しく表示されているか
確認段階を分けるのは、後から意見を出してはいけないという意味ではありません。気づいた内容はその時点で制作会社へ伝え、変更できる範囲やスケジュールへの影響を相談します。
「修正1回」は、指摘の個数ではなく一往復を指すことが多い
見積書や提案書に「修正2回まで」と書かれていると、「直せる箇所は2つまで」と受け取られることがあります。
動画制作では、指摘した箇所の数ではなく、発注側から修正内容をまとめて受け取り、制作会社が反映した映像を再提出するまでの一往復を「修正1回」と数えることが多いです。
- 制作会社が初稿を提出する
- 発注側が社内の意見をまとめる
- 修正指示を制作会社へ送る
- 制作会社が内容を反映して第2稿を提出する
この一連のやり取りが、修正1回にあたります。1回の依頼に複数の指摘が含まれていても、それぞれを1回ずつ数えるわけではありません。ただし、数え方や1回に含められる内容は、制作会社や案件によって異なります。見積もりの金額だけでなく、「どの時点から1回と数えるのか」も確認しておくと分かりやすくなります。
社内の意見は、制作会社が作業を始める前にまとめる
発注側に複数の確認者がいる場合は、社内の意見をまとめてから制作会社へ送ります。
最初の担当者から修正指示を受けて制作会社が作業を始めた後に、別の担当者から追加の指示が届くと、同じ箇所をもう一度変更する場合があります。内容によっては、次の修正回として扱ったり、提出日を調整したりすることもあります。
すべての意見が完全に一致する必要はありません。意見が分かれている場合は、発注側でどちらを優先するのかを決めるか、判断に迷っている点として制作会社へ相談します。
認識の差を直す修正と、新しい要望を分ける
初稿を見て、事前に共有した意図と異なる部分があれば、その差を近づけるための修正として伝えます。一方、初稿を見たことで、事前にはなかった希望が生まれることもあります。
- 動画の対象者を変える
- 新しい情報や場面を追加する
- 確認済みの構成を大きく変更する
- 動画の長さを大幅に増やす
- 当初とは異なる雰囲気へ変更する
こうした内容は、通常の修正回数に含まれる場合もあれば、追加の作業として扱う場合もあります。変更の大きさや制作方法によって対応が異なるため、制作会社と相談して決めます。
修正回数を確認するときは、回数だけでなく、次の点まで共有しておきます。
- 修正1回をどの単位で数えるか
- 何回分が見積もりに含まれているか
- 意見を送る期限はいつか
- 未完成の予定作業をどう扱うか
- 新しい要望が出た場合はどう進めるか
修正には、編集で直すもの・作り直すもの・撮り直すものがある
修正の内容によって、制作会社の対応方法は変わります。編集ソフト上で変更できるものもあれば、AIで映像を作り直すもの、新しい撮影や収録が必要になるものもあります。
発注側が制作方法まで判断する必要はありません。ただし、作り直しでは直したい部分以外にも影響が出ることがあり、撮り直しには追加費用が発生します。違いを知っておくと、制作会社からの説明を理解しやすくなります。
テロップや音量は、通常の編集で変更できることが多い
AIで作った映像でも、動画全体の仕上げには一般的な編集ソフトを使います。
テロップの文章や位置、ナレーションの音量、BGM、効果音、カットの長さ、場面の順番などは、元の映像を再生成せずに変更できることが多い部分です。
ただし、ナレーションを長い文章へ変えると、映像の長さや場面の切り替えにも影響します。ひとつの変更に見えても、制作会社が前後の場面を含めて対応方法を考える場合があります。
人物の表情や動きは、映像の再生成が必要になることがある
AIで生成した映像は、人物、背景、動きなどが、後から個別に変更できる素材として残っていないことがあります。そのため、「人物の表情だけ変えたい」「手の動きだけ直したい」という指示でも、カット全体を再生成する場合があります。
再生成が必要になりやすいのは、人物の表情や視線、手や身体の動き、背景、カメラの動き、AI生成によって生じた形の違和感などです。一部分だけを修正できる場合もありますが、制作方法や元の素材によって対応は異なります。
カットを再生成すると、直したい部分だけでなく、人物の顔、服、背景、光の当たり方まで変わることがあります。そのため制作会社から、再生成する方法と、編集や合成で対応する方法を並べて相談することもあります。
AI動画がどのような工程で作られるかは、次の記事で説明しています。
AI動画制作会社への依頼の流れ|工程・費用・修正対応の進め方
「動画を頼みたいけれど、AI動画って結局アニメっぽい映像でしょう?」——AI動画について制作会社へご相談いただくと、最初...
実写インタビューやナレーションは、撮り直しになることがある
見積もりに含まれる修正は、すでに撮影・収録した素材と、確認済みの構成を使って変更することが基本です。新しい撮影や収録が必要になる変更は、編集作業の範囲を超えます。見積もりに修正回数が残っていても、再撮影や再収録には追加費用が発生します。
撮影済みのインタビューでも、発言を短くする、順番を入れ替えるといった編集は可能です。ただし、収録されていない発言は追加できません。発言内容を変更する、新しい質問への回答を加える、別の場所や服装で撮り直すといった場合は、スタッフ、撮影場所、機材、出演者の日程をあらためて用意することになります。
人によるナレーションも、承認された原稿をもとに収録します。収録後に原稿を変更する場合は、ナレーター、収録場所、収録スタッフの再手配に加え、音声データの再編集が必要です。なお、ナレーターの読み間違いや、制作会社側の手違いによる録り直しとは分けて扱います。
こうした変更が起きそうな場合は、撮影や収録の前に、原稿を確定する期限と、収録後に変更できる範囲を制作会社と確認しておきます。
動画の目的や対象者が変わる場合は、構成から見直す
「商品の説明より、会社の信頼感を中心に見せたい」「採用向けに、働く人の様子を増やしたい」といった要望は、対象者や伝える内容そのものに関わります。
初稿が事前に共有した意図と異なるのであれば、認識の差を近づける修正として扱います。一方、初稿を見た後に目的や対象者を変更する場合は、新しい要望として構成から見直すことがあります。
確認済みの構成を大きく変えると、テロップ、ナレーション、音、映像にも変更が及びます。通常の修正回数に含まれるか、追加作業になるかを制作会社と相談します。
ここでいう「修正できない」は、変更そのものが不可能という意味ではありません。通常の編集作業では対応できず、新しい撮影や収録として扱うという意味です。
「なんか違う」は、無理に文章にしなくてよい
初稿を見て違和感があっても、それがどこから来ているのか、すぐには言葉にできないことがあります。映像は、色、音、動き、間、テロップなどが同時に働くため、感じたことと原因が一致しないことも珍しくありません。
修正指示を、すべて文章で完結させる必要はありません。伝え方は、内容によって使い分けられます。
| 修正の内容 | 向いている伝え方 |
|---|---|
| 全体の印象、雰囲気、テンポなど、言葉にしにくいもの | 映像を一緒に見ながら話す |
| 誤字、音量、テロップの文言、尺など、内容が決まっているもの | 箇条書きで送る |
どちらかに決める必要もありません。まず話し、決まった内容を書面で確認する進め方が多くあります。
言葉にしにくい違和感は、一度話す場をつくる
「なんとなく硬い」「思っていた感じと違う」といった感覚は、文章にしようとすると時間がかかります。うまく整理できないまま送ると、制作会社側も解釈に迷います。
こうした場合は、短い時間でも映像を一緒に見ながら話すほうが早く進みます。オンラインの画面共有で、「この辺りが気になる」と場面を指しながら伝えるだけでも、制作会社は色なのか、音なのか、場面の長さなのかを絞り込めます。
感覚的な言葉を制作の方法へ置き換えるのは、制作会社の仕事のひとつです。発注側が原因まで特定する必要はありません。言葉にしにくい修正が出てきたときは、打ち合わせの時間を取れるか相談してみてください。
内容が決まっている修正は、箇条書きで送るほうが早い
一方、変更する内容がはっきりしている修正は、書面のほうが確実です。
- 社名や商品名の誤字
- テロップの文言や表記の統一
- ナレーションやBGMの音量
- 不要な場面の削除
- 表示する時間の長さ
こうした修正は、口頭だけだと聞き漏らしが起きやすく、後から確認もしにくくなります。番号を付けて送っておくと、制作会社側も対応を確認しやすくなります。
伝えるのは、場所と気になったことだけで十分
書面で送るときも、細かな指示書をつくる必要はありません。次の3つがあれば、たいていは伝わります。
- どこが気になったか(「00:18から」「冒頭の商品が出る場面」など)
- 現在どのように見えるか、聞こえるか
- どうしたいか
たとえば、「00:18からの画面左側の人の表情が硬く見えるので、もう少し話しかけやすい印象にしたいです」と書けば、制作会社は、別のカットへ替える、色や音を変える、AIで映像を作り直すといった方法を比べられます。修正の方法まで指定する必要はありません。
AIで生成した映像を直す場合だけは、「背景と服装は今のままがよい」のように、残したい部分もあわせて伝えておくと安心です。カット全体を作り直すと、直したい部分以外も変わることがあるためです。
修正が多いときは、「必ず直したい」「できれば直したい」を分けておくと、納期との調整がしやすくなります。優先度が分かれば、制作会社から対応の順番を提案できます。
打ち合わせで決めた内容は、制作会社が記録に残す
話しながら決めた内容は、制作会社側が整理して発注側へ返します。発注側で議事録をつくる必要はありません。
制作会社は、稿を提出するときにも、今回どこを見てほしいのか、まだ作業中の部分はどこか、今回のやり取りを修正何回目として扱うのかを伝えます。発注側は、その説明を読んで、認識と違うところを返す形で進められます。
提出時にこうした説明がない場合は、「今回はどこを確認すればよいですか」と聞いてみてください。確認する範囲がはっきりすると、意見を出す側の負担も軽くなります。
動画は、話しながら形にしていくもの
修正のやり取りは、発注側が正確な指示書を書くための作業ではありません。制作会社の解釈と、発注側の意図を近づけていく過程です。
書面に残すことには意味があります。決まった内容を後から確認でき、社内での共有にも使えます。ただ、すべてを文章にしようとすると、伝えるまでに時間がかかり、かえって感覚が薄れてしまうこともあります。話したほうが早いことは話し、決まったことを残していく。この組み合わせが、結果として修正の回数を減らします。
制作を始める前の打ち合わせで、次のような点を話しておくと、初稿を見たときの差も小さくなります。
- 誰に見てもらい、何を伝えたい動画なのか
- 参考動画がある場合、そのどの部分を参考にしたいのか
- 必ず守ってほしい内容と、制作会社に任せる内容
- 社内で最終的に判断するのは誰か
すべてを事前に決める必要はありません。決まっていない部分は、決まっていないと伝えておけば、制作会社はそのつもりで進められます。
分からないことがあれば、そのまま聞いてください。制作会社は、修正を減らすことではなく、意図した動画に近づけることを目的にしています。
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