【AI映像の現在地|2026年8月】映像の中で、テキストアニメーションが違和感なく作れるようになった
AIに作らせた映像の中の文字は、読めそうで読めない形に崩れる。看板や字幕がそうなるのを見たことがある方は多いと思います。だから文字は後から編集ソフトで載せるもので、生成に任せるものではない。私たちもその前提で見積もりを組んできました。
一方で、文字が主役の短い映像をAIで安く作れないか、という相談はずっといただいてきました。社内キックオフのアタックVTR、表彰式の導入、展示会で流すループ。予算をかけるほどではないけれど、無いと場がしまらない。そういう映像です。文字が主役である以上、これまでは「その部分は生成では作れません」とお答えするしかありませんでした。
その前提が、崩れはじめています。
「AI映像の現在地」は、AI映像の新しい能力が論文から実務までのどの段階まで来たかを、研究情報と制作現場の両方から確かめる不定期連載です。今回は自社サービスの架空CMを題材に、15秒を通しで作ってみました。
【AI映像の現在地|2026年8月】AI動画の次の主戦場は「覚えておく力」。長くても崩れない動画の素地が育ちはじめた
目次OPEN1.今回の現在地:研究は「数分」を報告、製品は「180秒」を発表2.研究がそろって取り組みはじめたのは「覚え...
映像の中で、テキストアニメーションが違和感なく作れるようになった
作ったのは、自社サービスの架空の15秒CMです。白からアイボリーを基調に、青のアクセント、図形、波形、矢印、軌道、そして文字がテンポよく切り替わっていく、リリックビデオに近いモーショングラフィックを目指しました。
出てきたものが次の動画です。
図形と波形と文字が同じリズムで動き、切り替わりのタイミングも合っています。しかも音が別工程ではありません。ナレーション、BGM、効果音が、映像と同じ生成の中から一緒に出てきます。
同じものを編集ソフトで組むなら、素材を集めて、タイミングを合わせて、音を当てて、と数日かかります。それが指示文と数点の素材から出てきました。
文字が読める形で出ている、という話だけではありません。文字そのものが動きの一部になっています。タイポグラフィアニメーションと呼ばれてきた領域が、生成の射程に入りました。
使ったモデルと、出力の実際
使ったのはMiniMax H3です。2026年7月31日に発表されたモデルで、5秒から15秒、2Kの24フレームで、映像とステレオ音声を同時に作ります。今回はクラウドサービス経由で使いました。
このモデルは、オープンウェイトと呼ばれる形で中身そのものが公開されています。8月3日に公開されたので、条件が合えばクラウドを通さず手元の機材でも動かせます。使い方の選択肢が最初から二つあるのは、以前のモデルとの違いです。
出力については、ひらがなの表記などがそのままでは使えない回も何度かありました。ただ、指示文を工夫し、何本か出していけば必要な形に届きます。何度出しても出てこない、という状態にはなりませんでした。実務で使える線までは出せます。
英語版も作りました。こちらは直すところがありませんでした。
図解やUI画面まで、作れる段階に入っている
今回スマービーAIのCMを作ってみました。
提供側の説明では、字幕やクレジット、商品パッケージのラベル、ブランド表記が読める形で出せるとされています。加えて、サービスの紹介ページ、ゲームのメニュー画面、動くポスター、タイポグラフィそのものを動かす表現も挙げられています。文字を含んだ画面設計を、そのまま映像として動かせるという説明です。
静止画のほうでは、この変化が先に来ていました。GPT Image 2が出てから、グラフィックの中の文字や文章を、それなりの精度で表現できるようになっています。図解やポスターに近いものでもGPT Image 2で生成可能です。
一方で、動画は長く追いついていませんでした。文字の入ったグラフィックを参照画像として渡しても、映像になった時点で文字が崩れたり、ロゴや図版についても参照画像を正確に維持することは困難でした。そこがMiniMax H3の登場により大きく変わりました。ある程度の正確性を保ちつつ、参照素材は画像が最大9点、動画が3点、音声が3点で、合わせて12点まで渡せます。
指示プロンプトについても十分な記載が可能で、15秒程度の映像であれば全く足りないということにはなりません。カット割りにも対応しているため、秒数で区切って「0秒から2秒は俯瞰」「2秒から4秒でゆっくり寄る」と書き分けられます。
これまで生成AI動画といえば、風景、人物のカット、抽象的なイメージ映像でした。文字や図をそのまま入れることは難しく、会社案内の中で数字を見せる部分、サービスの仕組み図、操作画面の紹介など、正確性が求められる場面では、人の手によるハイブリッドでの編集が必須でした。
その境界線が、MiniMax H3の登場で変わってきたと感じています。文字が読める形で出せるなら、文字と図で説明する映像も生成の側に入ってきます。BtoBの映像はこの種の画面が多いので、影響を受ける範囲は広いはずです。
どんな用途で使えるか?
このMiniMax H3の登場により、どんな動画を生成AIだけで作ることが可能になったのでしょうか。
社内キックオフや表彰式など、インナー向けの利用に限った映像であれば、十分可能だと考えています。これらは「正しく読めること」が最低条件で、クリエイティブとしての精度までは求められません。
一方で、社名や商品名、キャッチコピーなど、文言の正確性が求められる映像はまだ難しいと言わざるを得ません。ブランドカラーをぴたりと指定したり、ロゴの利用規定を忠実にプロンプトだけで再現したりするのは、これからも難しいケースが続くはずです。
ナレーションについても、イントネーションやトーンをプロンプトだけでコントロールするのは難しく、対外的に不特定多数の目に触れる用途で使う場合は注意が必要だと感じています。
ただ、今回のH3の登場で、「生成の段階で文字を動画に組み込む」という道筋ができたこと自体は、大きな進化だと感じています。以前は、文字の入る映像そのものが生成の対象になりにくいものでした。今は、どこまでの精度をその場で求めるかという判断に変わっています。
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研究側では、映像を「直せる形」で受け取る設計が増えている
ここまで書いてきた変化を、少し広い流れの中に置いてみます。
複数の素材を同時に参照する仕組みも、長い尺を扱う仕組みも、ここ数か月ですでに見えてきていました。Seedance 2.5は現在、標準で30秒まで出力できます。ロゴや文字を含む参照素材を、崩さずに映像へ持ち込む土台が整いつつあった、ということです。
今回のMiniMax H3で、その精度がもう一段進んだと感じています。文字を含めた参照素材を、忠実に再現できる水準まで来ました。
とはいえ、精度は100%ではありません。今回もひらがなの表記が崩れる回はありましたし、ブランドカラーやロゴの規定を寸分違わず再現するところまでは届いていません。
研究の側を見ていても、100%に近づけるアプローチだけでなく、いったん生成したものの差分だけを直す、という流れが見えてきています。完成した映像を一度に出して終わりにするのではなく、あとから部分的に直せる形で受け取る設計を扱う論文が、直近でいくつか目に留まりました。
論文「Bunraku」(arXiv:2607.27348)は、一枚のイラストから、重なり順を持ったレイヤーと、動かすための骨組みをまとめて作る研究です。表情やパーツを個別に直せる形で受け取れるよう設計されています。
論文「Alpha as an Efficiency Signal」(arXiv:2608.09355)は、背景をつくってから切り抜くのではなく、透明な背景を含んだ映像素材を直接生成する研究です。著者らは、後から別の背景に載せ替えて使う素材として扱いやすい形を狙ったと報告しています。
論文「aDSL」(arXiv:2608.17975)は、AIが数値を直接いじって3D形状を作るのではなく、「上に置く」「隣に並べる」といった関係で組み立てる研究です。あとから位置や構造を直しやすい形で3D素材を作る狙いがあります。
いずれも査読前の研究で、映像制作の各工程でそのまま同じ効果が出ると確認されたわけではありません。この数本だけで研究全体の潮流と言い切れませんが、Smarveeが日々の論文を見ている中で、同じ方向を向いた研究に立て続けに出会った、というのが実感です。次に来るのは、差分だけを直せる形の生成ではないかと見ています。
今回、手を動かして分かったこと
今回、自社サービスの架空CMを通しで作ってみて、ほぼほぼ文字が崩れずに出てきたことに驚きました。文字にアニメーションが入っても違和感なく表現できており、日本語でも、何本か試せば実務で使える結果に届きます。英語に至っては、直すところがありませんでした。
インナー向けの映像であれば、生成した結果をそのまま出力として使えます。
一方で、社名やブランドカラー、法律上必要な注記文言といった、一文字も違えられないものが入る映像は、まだ人の手で確定させる工程が残ります。また、思い通りの出力を実現するには、それなりの出力経験が必要になってきます。
このあたりの見極めに迷ったら、スマービーにご相談ください。
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