動画の効果測定、何から始める?BtoB動画の現実値と100回再生でも語れる4つの整理術

動画を作ったあと、社内の月次報告で「視聴回数:87回」とだけ書いて、それ以上のページが続かない場面はありませんか。

ビジネス動画は、広告費をかけずにYouTubeで公開すると、再生回数が3桁に届かないことが珍しくありません。これは動画の質の問題というより、YouTubeの指標がもともと一般消費者向け(コンシューマー向け)に最適化されているからです。再生回数・チャンネル登録者数・広告収益などはエンタメや趣味系の動画には合いますが、業務寄りで母数が小さいBtoB動画では、そのまま当てはめると違和感の残る数字になります。

一方で、動画ビューワーや埋め込み機能としてのYouTubeは便利で、自社サイト・営業資料・メール経由で動画を見せる場としては今も第一候補です。「動画の置き場としてはYouTubeを使う、でも成果評価はYouTubeの指標では測らない」という状態をどう運用するか、というのがビジネス動画の効果測定の論点になります。

この記事では、再生回数の多寡に振り回されずに動画の成果を語るために、撒いた場所・クリック・UTM・視聴の深さ・商談貢献までを順に整理します。

動画の効果測定で詰まる典型パターン

ビジネス動画の現場でよく聞くつまずきは、おおむね次の3つに分かれます。

ひとつ目は、視聴回数を出すこと自体が気が引けるパターン。1桁・2桁の再生回数が並ぶと、動画を作った意味そのものを疑われそうで、報告書から外したくなる。とはいえ別の指標も用意できておらず、報告のしようがない、という状態です。

ふたつ目は、比較対象がなく単体の数字で終わるパターン。前年比も他施策との比較もないと、200回が多いのか少ないのか判断のしようがなく、「次にどうすればいいか」の議論に進めません。

みっつ目は、動画とビジネス成果の橋渡しができないパターン。採用動画なら応募数、販促動画なら問い合わせ件数、社内研修動画なら理解度や定着率と紐づけたいところですが、計測の仕組みがなく「動画を出した時期に応募が増えた気がする」で止まることが多くなります。

これらは動画そのものの出来というより、YouTubeのコンシューマー向け指標に引きずられて、ビジネス向けの測り方を準備せずに走り出したことが原因になりやすい部分です。次の章では、再生回数の現実をデータで確認します。

まず知っておく:BtoB動画の再生回数の現実

YouTube動画の再生回数分布100回未満の動画が65%以上を占めるYouTube動画の中央値35100回未満65.44%100〜999回22.96%1,000〜9,999回7.93%1万回以上3.67%1万回超は3.67%だけ。しかしこの少数派が、YouTube全体の再生数の93.61%を独占。100回未満の動画は、失敗ではなくYouTubeの大多数派。出典:McGrady et al. 2023「Dialing for Videos」(約10億動画のランダムサンプリング)/ Pex 2019年調査(88.4%が1,000回未満)

YouTube動画の再生回数分布。100回未満が65%以上を占める

少し古い海外データで恐縮ですが、YouTube全体の動画を見ると、再生回数の中央値は35回でした(McGrady et al. 2023「Dialing for Videos」、約10億動画のランダムサンプリング)。100回未満の動画が65.44%、1,000回未満は88.4%という分布です(後者はPex 2019年調査)。1万回を超えるのは3.67%にすぎません。

国内でも、プロが運用に入って伴走しても1ヶ月目は1本あたり200〜300再生が一般的とされており(株式会社アカシア 2025-05-10)、自走運用なら100回未満から始まる場面は多くなります。

これは私たち動画制作の現場感覚にも近い数字です。BtoB動画は業務寄りで視聴母数が小さく、母数の小ささを前提に成果を語る必要があります。

この記事は、再生数100回未満で悩む動画担当者に向けて書いています

「動画を出したけど100回も回らない」「報告書に何を書けばいいかわからない」「上司に何を見せれば成果と呼べるかわからない」。BtoB動画の運用ではこうした場面に立ちやすくなります。

本記事はこの状況を前提に、100回未満の再生数でも価値ある効果測定をするための整理術をまとめます。100回未満は失敗ではなく、業務寄り動画の自然な出発点です。視聴者一人ひとりを追える距離感だからこそ、見える数字も別にあります。

施策検討の段階で経営層・依頼元と「うちの動画は100回未満が出発点になる可能性が高い、その前提で何を成果と呼ぶか」を握っておくと、後の評価基準のすれ違いが減ります。

次の章からは、撒いた場所 → クリック → UTM → 視聴の深さ → 商談貢献の流れで、現場で使える整理術を見ていきます。

動画は「どこに撒いたか」から把握する

動画を撒く場所一覧媒体ごとに「クリックが取れる」か「肉眼カウントか」が分かれるオンラインの出口クリック数が取れるメルマガ配信ツールでクリック数を計測自社WEB(LP・お知らせ)GA4でPVと遷移を計測SNS(X/LinkedIn等)投稿アナリティクスでクリック数QRコード(チラシ・パンフ)媒体ごとに別QRで読み取り回数営業の個別メールSFAやハッシュ付き短縮URLで追跡オフラインの出口肉眼カウント・推定展示会ブース(流しっぱなし)立ち止まり人数・滞在時間を運営でカウント店舗・受付・ロビーのモニター通行人数・反応を肉眼で記録説明会・セミナー会場出席者数・反応を運営で記録名刺・カタログ裏のQR読み取られて初めてオンラインに移行

動画を撒く場所の整理マップ。オンラインとオフラインで取れる指標が違う

100回未満の再生数を意味のある数字に変える最初の一歩は、「どこに撒いたか」を一覧化することです。出口が複数あるのに同じURLで全部撒くと、後から「どこから来た100回か」が追えなくなり、報告書も「視聴回数100回」で止まってしまいます。

撒いた場所は大きく2つに分かれます。

オンラインの出口

  • メルマガ:購読者リスト向けの直接配信
  • 自社WEB:トップページ/LP/プレスリリース/お知らせ欄
  • SNS:X/LinkedIn/Instagram/Facebook(BtoBはLinkedInも有力)
  • チラシ・パンフレットのQRコード
  • 営業の個別メール(商談中の見込み客への送付)

オンラインの出口はすべてクリック数が取れるので、後で媒体別に分けて見られます(次の章で扱います)。

オフラインの出口

  • 展示会ブースのモニター(流しっぱなし)
  • 店舗・受付・ロビーのモニター
  • 説明会・セミナー会場の上映
  • 名刺やカタログ裏のQRコード(読み取られて初めてオンラインに移る)

オフラインの出口は「クリック」という概念が当てはまらない場面が多くなります。展示会ブースの流しっぱなし動画なら、「立ち止まった人数」「平均滞在時間」を運営スタッフが肉眼でカウントするのが現実的です。最近はAIカメラで通行人数・足止め率を自動計測する機材もあります。

「撒いた場所を一覧化する」だけでも、報告書の解像度が上がります。

たとえば再生数が90回だったとして、内訳が「メルマガ40回/自社WEB30回/SNS10回/展示会ブースで推定100人が視聴(オフライン分)」と書ければ、「90回」だけ書くより遥かに伝わる報告書になります。

撒いた場所のリストは、施策の意思決定段階で先に作るのが理想です。動画を作る前に「どこに撒くか」を決めておけば、撒くときに媒体ごとのリンクを分ける準備に直結します。

動画は「どれだけ見られたか」(クリック数)

撒いた場所が見えたら、次に取るのは媒体ごとのクリック数です。「総再生数100回」より「メルマガ40回/WEB30回/SNS10回/その他20回」のように分かれている方が、報告書として遥かに価値があります。媒体別の集計が、効果測定で最も大事な作業と言っても過言ではありません。

媒体ごとの基本的な計測手段は次の通りです。

メルマガ

配信ツール(Mailchimp、HubSpot、配配メール、Cuenote、Benchmark Emailなど)の標準機能で、メール内リンクのクリック数が取れます。「動画リンクを何人がクリックしたか」が、配信ツールのレポート画面で確認できます。

自社WEB(LP・お知らせ・コラム)

GA4でリンクのクリックイベントを設定するか、動画ページへの遷移を計測します。動画自体を埋め込んでいるページなら、ページのPVや滞在時間も合わせて見られます。

SNS

各プラットフォームの分析機能でリンククリック数が確認できます(X:投稿アナリティクス/LinkedIn:投稿の分析/Instagram:プロアカウントのインサイト/Facebook:Meta Business Suite)。

QRコード(チラシ・パンフ・名刺)

QRコード生成サービスの一部(QRコード生成プラス、Bitlyなど)で、QRが読み取られた回数を計測できます。媒体ごとに別のQRを発行するのがポイントで、同じQRを全媒体で使うと内訳がわかりません。

営業の個別メール

HubSpotやSalesforceなどのSFA/CRMで、メール内リンクのクリック計測ができます。導入していない場合は、案件ごとに別の短縮URLを発行する手もあります。

ただ、これらの数字を各ツールでバラバラに記録していくと、最終的に1つのレポートに統合するのが大変になります。メルマガはMailchimpの画面、WEBはGA4の画面、SNSは各プラットフォームの画面、と毎回見る場所が変わるからです。

そこで使われているのが、リンク自体に「どこから来たか」の印を付ける仕組みです。撒く場所ごとに別の印を付けたリンクを使えば、GA4などで一括して内訳を見られるようになります。次の章で紹介します。

最初に覚える「UTM」のインプット

UTMの構造自社サイトのURLに「印」を書き足すだけsmarvee.com/column/example/自社サイトのURL?utm_source=mailmagutm_source(必須)&utm_medium=emailutm_medium(必須)&utm_campaign=2026springutm_campaign自社サイトのURLUTMが効くのはこのドメインだけYouTubeのURLには付けても自社GA4には届かないどこから来たか媒体名(自由記入)例:mailmag、x、linkedin、qr_a、newsletter経路の種類慣習的な値から選ぶemail/social/cpc/qrcode/referralどの施策・企画か任意の名前(自由記入)例:2026spring、tradeshow_q2忘れがちなポイント「?」はパラメータの開始記号、「&」はパラメータの区切り記号。どちらも省略するとUTMが効かない。UTMの追加は動画を撒く前に。後から付けても過去のアクセスには遡れない。運用イメージメルマガ/SNS/QR → UTM付きの自社サイトURL → ページ内に動画を埋め込み or YouTube埋込で再生

UTMの構造。自社サイトのURLに「印」を書き足すだけで、流入元が記録される

前章で出てきた「リンクに印を付ける仕組み」が、UTM(読み方:ユーティーエム)と呼ばれるものです。難しい話ではなく、URLの末尾にいくつかのパラメータを付け足すだけで、「このアクセスはどこから来たか」をアクセス解析ツールに記録させられる仕組みです。

100回未満の動画こそ、内訳の解像度が報告書の価値を決めます。UTMはその内訳を一括で取るための土台になります。

前提:自社サイトに「GA4」が入っているか確認

UTMで集めた数字を見る場所として、現在最もよく使われているのがGA4(ジーエーフォー、Google Analytics 4)です。Googleが提供する無料のアクセス解析ツールで、Webサイトに専用のコードを埋め込むことで、訪問者の数や流入元、どのページがどれだけ見られたかなどを記録します。

自社サイトにGA4が導入されているかどうかは、システム部門・マーケティング部門・Web担当者に確認してください。サイト制作を外注している場合は制作会社にも聞くとスムーズです。

GA4が入っていない場合は、UTMを付けても受け皿がない状態なので、まずGA4を導入することが先になります。

UTMの基本

URLの末尾に、次のような印を付け足します。

https://smarvee.com/column/example/?utm_source=mailmag&utm_medium=email&utm_campaign=2026spring

最低限覚えておけば困らないのは3つです。

  • utm_source:どこから来たか(媒体名)。例:mailmag、x、linkedin、qr_a
  • utm_medium:どの種類の経路か。例:email、social、qrcode
  • utm_campaign:どの施策・企画か。例:2026spring、tradeshow_q2

なぜUTMが必要か

撒いた場所ごとに別のUTMを付けておけば、GA4で「この動画ページに来た100回のうち、メルマガ経由40回・SNS経由10回・QR経由20回」のように一括で内訳が見られます。各ツールの画面を行き来して数字を集める手間がなくなります。

よくある疑問:source・mediumを省いてcampaignだけ付けたらどうなる?

3つのうちcampaignだけ付けると、GA4側ではsourceとmediumが「(not set)」(未設定)として記録され、流入元の分類が機能しなくなります。「どの施策か」はわかっても「どこから来たか」が分類されないので、媒体別の内訳を見るという本来の目的が果たせません。

Google公式のドキュメントでも、UTMはsourceとmediumが必須の組み合わせとされています。3つセットで付けるのが基本と覚えておいてください。

気をつけること:UTMが効くのは「自社サイトのURL」だけ

ここが最も誤解が起きやすいポイントです。UTMは、自分が管理しているGA4で測りたいときに使う仕組みなので、YouTubeのURLに直接UTMを付けても、自分のGA4には届きません。YouTubeのアクセスはYouTube Analyticsの管轄で、外から付けたUTMパラメータは読み取られない仕様です。

実務では、次のような導線で使います。

  • メルマガ/SNS/QR → 自社サイトの動画ページ(UTM付き)→ ページ内で動画再生
  • メルマガ/SNS/QR → 自社LP(UTM付き)→ ページ内に動画を埋め込み

つまり、UTM付きのURLは自社のドメイン宛てに向ける必要があります。動画を見せたい場合は、自社サイトに動画を埋め込むか、動画ページを用意するのが王道です。YouTubeのURLを直接メルマガやSNSに貼ってしまうと、UTMの恩恵を受けられません。

設定方法

特別なツールは必要ありません。自社サイトのURLに、決められた印を書き足すだけで、メルマガに貼るリンク、SNSに貼るリンク、QRコードに使うリンクを、それぞれ別の印付きURLにします。GA4の導入有無さえシステム部門やマーケ部門と確認しておけば、特別なスキルは要らず、動画担当者本人で運用できます。

ただし、後からUTMを足しても、過去のアクセスには遡れません。動画を撒く前にUTMを決めて発行するのが必須で、ここを後回しにすると詰みます。

詳細は続編で

UTMの命名ルール、GA4側の確認方法、自社サイトに動画を埋め込む際の設計、URLが長い場合の短縮URL併用など、実務で使うときのコツは続編(第3部)で深掘りします。第1部では「UTMという仕組みがあって、自社サイトURLに付ける、最初に付けないと遡れない」の3点だけ覚えておけば十分です。

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動画は「どれだけ深く見られたか」(視聴の深さ)

視聴の深さを見る3つの指標100回未満の動画でも、最後まで見た人が何人いるかを語れる視聴維持率(BtoB動画の典型例)2分の動画/90回再生のサンプル(冒頭離脱が大きく、最後まで見るのは少数)100%75%50%25%0%開始25%50%75%終了平均視聴時間48秒(40%)フルウォッチ率30% (27人/90回)1. 視聴維持率動画のどこまで見られたかの曲線冒頭5秒で大きく離脱し、中盤で緩やかに減るのがBtoB動画の典型サンプル:終端で30%が残存2. 平均視聴時間1再生あたり、平均で何秒見られたか動画尺との比率で「半分は見た/3割で離脱」が分かるサンプル:48秒(動画尺の40%)3. フルウォッチ率最後まで見た人の割合90回中27人がフル視聴なら30%数字の少なさを質で語れる指標サンプル:90回中27人が完視聴「90回再生」だけ書くより、「90回再生のうち27人が最後まで視聴」と書ける取得先:YouTube Studio → アナリティクス/Vimeo(Proプラン以上で詳細データ)

視聴の深さを見る3つの指標。100回未満の動画でも語れる

クリック数だけだと「リンクは押したけど中身は見ていない」可能性が残ります。100回未満の動画ほど、どれだけ深く見られたかを一緒に取っておくと、報告書の説得力が一段上がります。

「最後まで見た人がいるか」「平均で何秒見られたか」が分かれば、視聴回数の少なさを質の高さで補えるようになります。

どこで見られるか

視聴の深さの数値は、動画プラットフォーム側のアナリティクスで確認します。GA4ではなく、動画を置いている場所の管理画面です。

  • YouTube:YouTube Studio → アナリティクス
  • Vimeo:Vimeoの動画管理画面 → 統計(プロプラン以上で詳細データ)
  • 自社サイト埋込(HTML5プレーヤー):別途プラグインや設定が必要、Wistiaなど専用サービスを使うと取りやすい
  • Google Drive・Microsoft Stream:再生回数程度しか取れない場合が多い

YouTubeとVimeoが2大選択肢で、BtoB動画は「YouTubeに置いて自社サイトに埋め込む」運用が多くなります。

主な指標は3つ

覚えておけば困らないのは次の3つです。

  • 視聴維持率(Audience Retention):動画のどこまで見られたかの曲線。冒頭で大きく落ちないか/途中の山谷/最後まで残った割合をチェックします。
  • 平均視聴時間(Average View Duration):1再生あたり、平均で何秒・何分見られたか。動画尺との比率で「半分は見た/3割で離脱」が分かります。
  • フルウォッチ率(または完視聴率):最後まで見た人の割合。100回中30人がフル視聴なら30%。

たとえば2分の動画で平均視聴時間が48秒、最後まで見た人が27人なら、「90回再生のうち27人が最後まで視聴」と書けます。「90回再生」とだけ書く報告書とは説得力がまったく変わります。

展示会の流しっぱなしは別の見方

オフラインで流しっぱなしにしている動画は、プラットフォームのアナリティクスでは取れません。代わりに、ブースでの運営スタッフの肉眼カウントが現実解です。

  • ブース前を通過した人数(推定)
  • 立ち止まった人数
  • 平均滞在時間(時計をチラ見する程度の精度でOK)
  • 動画のどのシーンで反応が大きかったか

最近はAIカメラで通行人数・滞在時間を自動計測できる機材もあり、年に数回しか使わないなら展示会会場側のレンタルで賄える場合もあります。

商談・CVへの貢献は、動画だけでは切り分けられない

受注までの接点と、動画の位置づけ動画は受注プロセスの「一接点」。単体での貢献を切り分けるのは原理的に難しい認知検討比較商談受注広告/SNS検索動画プレスリリース業界メディア自社WEB資料DL動画メルマガセミナー参加他社比較口コミ・レビュー問い合わせ既存顧客の紹介展示会・セミナー営業メール提案書・対面商談見積書トライアルクロージングGOAL受注動画は主に「認知」「検討」段階の一接点として働く。比較・商談は別の施策が中心になる「動画単体でいくら売れたか」ではなく「動画が施策の中でどんな形跡を残したか」を記録するのが現実解

受注までの接点と、動画の位置づけ。動画は施策セットの一接点として働く

ここまで「撒いた場所」「クリック数」「視聴の深さ」と数字を集めてきました。次に経営層や依頼元から聞かれるのは、たいてい「で、結局この動画でいくら売れたの?」です。

この問いに正直に答えるなら、動画単体の貢献を切り分けることは原理的に難しい、というのが現実です。

なぜ切り分けが難しいか

商談や受注に至るまでに、見込み客は複数の接点を経由します。

  • WEB広告で商品名を知る
  • 検索で公式サイトを見る
  • 動画を視聴する
  • 資料をダウンロードする
  • 営業からメールが来る
  • 商談で話を聞く
  • 社内で稟議を回す
  • 受注

このうち「動画を見たから受注した」と切り出すのは難しく、複数の施策が重なって初めて受注に至っているからです。広告・SNS・営業活動・既存関係性などが全部絡んでいます。

特にBtoBは検討期間が長く、決裁者が複数いて、購買プロセスが半年〜1年かかることも珍しくありません。動画はその中の一接点として働いています。

現実的な切り分け方

完全に切り出すのは諦めて、次のような形で「動画が貢献した形跡」を集めるのが実務的です。

1. 営業ヒアリング

商談や面接の場で「動画見ました」「資料の前に動画から内容を理解しました」と言われた件数を、営業の月次定例で回収します。商談メモのフォーマットに「動画への言及があったか」のチェック欄を1つ足すだけで、定性データが貯まり始めます。

2. GA4で「動画ページ → 問い合わせフォーム」の遷移を見る

UTMを付けたURLで自社サイトの動画ページに来た人が、その後どれだけ問い合わせフォームや資料DLページに進んだかを、GA4で確認できます。これは数字として残るので、報告書に書きやすい部分です。

3. キャンペーン単位での比較

「動画ありキャンペーン vs 動画なしキャンペーン」のセット単位で、問い合わせ件数や受注額を比較します。動画単体の効果ではなく、動画を入れた施策セット全体の効果を見るやり方です。

期待値の握り直しが大事

施策検討の段階で、経営層・依頼元と「動画は決定打ではなく、施策セットの中の一接点として働く」という前提を共有しておくと、報告書のすれ違いが減ります。

100回未満の再生数でも、商談で「見ました」と言われた件数が3件あれば、それは動画が貢献した「形跡」として記録できます。「動画単体でいくら売れたか」を出すことは諦めて、動画が施策の一部としてどんな形跡を残したかを記録する形に切り替えていきます。動画の効果を断定せず、観測できた事実を並べる、という距離感です。

100回未満でも語れる報告書の組み方

ここまでの章で集めた数字を、報告書としてどう組むか。100回未満の動画を前提にしたマトリクスを置きます。このマトリクスを埋めるところから始めましょう。各ブロックを月次で埋めていけば、報告書が出来上がります。

1. 媒体別クリック数とクリック率

媒体 配布数・インプレッション数 クリック数 クリック率
メルマガ __件(配信) __回 __%
自社WEB(記事・お知らせ) __PV __回 __%
SNS(X) __IMP __回 __%
SNS(LinkedIn) __IMP __回 __%
QR(チラシA) __枚(配布) __回 __%
営業の個別送付 __件(送信) __回 __%

取れる数字だけ埋めればOKです。配布数が取れない流入(自然検索・直接アクセス)はクリック数だけ別途メモしておくと十分です。展示会の流しっぱなしは別枠で扱います(後述)。

2. 視聴の深さ(YouTube/Vimeoアナリティクスより)

項目
再生回数 __回
平均視聴時間 __秒(動画尺の__%)
完視聴人数 __名
視聴維持率 __%

3. 商談・CVの形跡

項目 件数・人数
動画ページ → 問い合わせフォーム遷移(GA4) __件
商談で「動画見ました」と言及(営業ヒアリング) __件
展示会ブース立ち止まり推定(運営スタッフカウント) __名

このマトリクスを月次で埋めていけば、ここまでの章で扱った内容がそのまま報告書になります。「90回再生」の一言で終わらせるより遥かに伝わる形になります。

マトリクス運用のコツ

  • 毎月同じフォーマットで埋める:書きやすさよりも「比較しやすさ」を優先
  • 数字が取れない欄は無理に埋めない:「ここはまだ取れていない」が一目でわかる方が運用が続く
  • 所感は2〜3行で十分:解釈は短く、数字は厚く

続編:もっと深く知りたい方へ

第1部では「数字を取る仕組みを整える」までを扱いました。動画運用が一巡したら、次は目的別のKPI設計や改善サイクルに進みます。

  • 第2部(準備中):動画KPIの組み方|採用・販促・社内研修・展示会・IRの目的別早見表
  • 第3部(準備中):100回未満から伸ばすクリエイティブ改善サイクル|サムネ・冒頭5秒・CTAの磨き方とAI動画時代の検証

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よくある質問

Q.100回未満でも本当に報告書になりますか?
A.なります。再生数の絶対値ではなく、撒いた場所と視聴の深さの内訳が見えていれば、十分に説得力のある報告書になります。本記事のテンプレを月次で運用するだけで、半年後には「動画を出すと何が起きるか」の社内認識が揃ってきます。
Q.UTMを付け忘れて公開してしまいました。遡れますか?
A.過去のアクセスには遡れません。次回以降の動画から付けて、過去分は「内訳不明」のまま記録に残し、運用が始まったタイミングを記録しておくのが現実解です。
Q.YouTubeに直接動画を置いて、メルマガにYouTubeのリンクを貼ってはいけないのですか?
A.技術的にはできますが、UTMが効かないため自社GA4で内訳が見られなくなります。「自社サイトの動画ページ → そこにYouTube埋込」という導線にすると、UTMの恩恵を受けられます。
Q.視聴の深さは何回の再生から取れますか?
A.YouTubeの場合、数十回程度の再生があれば視聴維持率の傾向は見えます。ただし1〜2桁では誤差の振れ幅が大きいので、運用の判断材料にするには100回前後あった方が安心です。
Q.営業ヒアリングを毎月やる時間がありません。
A.商談メモのフォーマットに「動画への言及があったか」のチェック欄を1つ足すだけで、定例ミーティングを別途持たずに記録できます。営業マネージャーに相談して、既存の商談記録に1項目足してもらう形が最短です。
Q.報告書はExcel・スプレッドシート・WordPressのどれで作るのが良いですか?
A.スプレッドシートが扱いやすい場面が多いです。月次でシートを増やしていけば、半年〜1年で時系列の比較ができるようになります。Excelでも問題ありません。重要なのは「同じフォーマットで続けること」です。

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