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映像制作前に知りたい「動画ファイル形式・フォーマット」

動画を媒体で使う場合、解像度、拡張子等、動画に関わるいくつもの取り決めが必要です。注意するポイントを整理ました。

画像に解像度やファイル形式があるように、動画にもいくつか決められた形式・仕様が存在しています。

当然動く画像である動画の方が、仕様で定めるべき項目も多く、その仕組みは複雑です。

実際マーケティングやプロモーションの担当者、広告代理店の方など、各社の入稿規定を見て、嫌気が差すことも多いのではないでしょうか?

今回は、そういった方の苦手意識を払拭するため、動画の仕様で理解しておくべきいくつかの主要ポイントと、YouTubeやFacebookをはじめとした主要なプラットフォームでの最適な動画仕様についてご紹介したいと思います。

1. 動画仕様を定義する7つのポイント

1-1. 解像度

静止画と同じように動画も解像度があります。画像の解像度というと、「サイズ」や「画素密度」を指しますが、動画の場合、解像度は「横×縦のピクセル数」を指します。身近なものの解像度だと、

 

・DVD:720×480(SD画質)
・Blu-ray:1920×1080(フルHD)
・地上デジタル放送は1440×1080(※縦横比が他と異なる理由は後述)

 

といった具合です。解像度で代表的なものとしては、フルHD(1920×1080)/ HD(1280×720)/ SD(720×480)/ 4K UHD(3840×2160)などがあります。

 

なお、iPhoneX等のカメラは4Kでの動画撮影に対応しており、 NetflixやAmazonプライムビデオなど主要なストリーミングサービスは4K配信に対応しています。また、最近ではこの他にもスマートフォンの普及や縦型サイネージの増加により、縦長の解像度の動画や、Instagramのような正方形の動画も登場してきています。

 

一部では、「解像度はフルHDでもう充分だ」という声もありますが、ディスプレイの大型化や4Kテレビの値下がり、スマホの画面描画力が上がってきたこと、総務省中心として4K・8K普及に向けた各種取り組みが進んできていることなどから、高解像度化はこれからも進んでいくと考えられます。

静止画と同じように動画も解像度があります。画像の解像度というと、「サイズ」や「画素密度」を指しますが、動画の場合、解像度は「横×縦のピクセル数」を指します。

 

身近なものの解像度だと、DVDは720×480のSD画質、Blu-rayは1920×1080のフルHD、地上デジタル放送は1440×1080(※縦横比が他と異なる理由は後述)といった具合です。

 

解像度で代表的なものとしては、
フルHD(1920×1080)/ HD(1280×720)/ SD(720×480)/ 4K UHD(3840×2160)
などがあります。

動画の解像度

1-2. ピクセルアスペクト比

ピクセルアスペクト比は、ピクセル比とも呼ばれ、動画データを構成する画素の幅と高さの比率を表しており、再生時の動画伸縮率を設定することができます。前述の解像度(動画自体のアスペクト比)と混同しやすいので気をつけましょう。

 

地上デジタル放送においては、旧来のSDフォーマットとの互換やデータ量の関係から、1440×1080(4:3)の解像度でピクセルアスペクト比が4:3のデータを配信し、テレビ側で引き伸ばしを行うことで、見た目を16:9にしていますが、WEB動画では基本的に正方形ピクセル(1:1)を使用すると考えておけば問題ありません。

1-3. ファイル形式(コンテナ)、コーデック

動画のファイル形式を把握するうえで、「コーデック」というものへの理解が必要になります。

 

一つの「動画ファイル」の中には、音声データと映像データが格納されています。
また、それのデータは、パソコンのソフトでより効率的に処理させ、扱いやすくるために「コーデック」というものにより圧縮・符号化(エンコードともいいます)されています。

 

つまり、動画再生をする際には、圧縮したときに利用した「コーデック」と同じ「コーデック」を使って、データを解凍してあげないと、再生できない仕組みになっています。

一つの「動画ファイル」の中には、音声データと映像データが格納されています。 また、それのデータは、パソコンのソフトでより効率的に処理させ、扱いやすくるために「コーデック」というものにより圧縮・符号化(エンコードともいいます)されています。

つまり、動画再生をする際には、圧縮したときに利用した「コーデック」と同じ「コーデック」を使って、データを解凍してあげないと、再生できない仕組みになっています。 この時点で「なにやら難しい・・・。」と思ったあなた、そんなことはありません!

そんなときは、「コーデック」を「鍵」に、「映像・音声データ」を「宝箱」に例えて考えてみましょう。 動画ファイルの中には宝箱が2つ入っていて、それぞれ異なる鍵で施錠されています。つまり、宝箱をあけて動画を再生するためには、それぞれの宝箱に対応した鍵(=コーデック)が必要になる、というわけです。

もし映像データを生成する際に「鍵A」、音声データを生成する際に「鍵B」で施錠した場合、あなたの手元に「鍵A」と「鍵B」がなければ動画を正常に再生することはできませんし、また「鍵A」だけ持っているというような場合には音声を再生することはできないということになります。

動画ファイルの中には宝箱が2つ入っていて、それぞれ異なる鍵で施錠されています。つまり、宝箱をあけて動画を再生するためには、それぞれの宝箱に対応した鍵(=コーデック)が必要になる、というわけです。

コーデックを理解する

1-4. 拡張子

拡張子とコーデック

ここでファイルの拡張子についても少し触れておきたいと思います。

 

パソコン上で取り扱うファイルは、それが何のデータであるかが分かるように、拡張子というものが付いています。メモ帳だったら「.txt」、エクセルだったら「.xls」や「.xlsx」、画像だったら「.jpg」や「.png」などがそれにあたります。

 

動画ファイルにも、それらと同じように拡張子が存在しており、代表的なところでは、「.mp4」「.mov」「.avi」「.mpg」などがあります。

例えば、「.mov」という拡張子に対応する映像の鍵(=コーデック)は、なんと10種類以上もあります。つまり、動画における拡張子は、中身や鍵をを予測するための目安に過ぎないのです。

 

それらの拡張子を見れば、動画ファイルであることは特定できるものの、拡張子と動画ファイル、また動画ファイルと鍵(=コーデック)が1対1でないため、拡張子はその正体を表す目安程度にしかならず、動画ファイルの扱いをより難しいものにしています。

 

主な動画ファイル・拡張子・コーデックを以下にまとめてみました。拡張子のみしか分からず、コーデックを調べたい場合は、「MediaInfo」や「真空波動研SuperLite」などのコーデックチェッカーと呼ばれるソフトを利用するといいでしょう。

 

WindowsであればWindowsMediaPlayer、MacであればQuickTimePlayerなど、最近の主要な動画プレイヤーは鍵(=コーデック)を内蔵しているものがほとんどです、そのソフトさえあれば、動画再生ができるといったものがほとんどですが、一部非対応のものがあるため注意が必要です。そのコーデックを手に入れるか、そのコーデックを内包したプレイヤーを入手する必要があります。

 

ファイルの拡張子だけでは、コーデックが特定できないため注意が必要です。制作会社などへ依頼を出す場合は、必ずコーデックも指定しましょう。

動画ファイルの形式説明主な拡張子主なコーデック
MP4圧縮率が高く利便性が高いが、非常に多くのコーデックがあるため中身が判別しづらい。YouTubeの推奨形式はmp4のH264方式。.mp4 .m4v(映像) MPEG1 MPEG2 MPEG4 H.263 H.264 H.265 H.264/AVC WMP9 (音声) AAC-LC AC-3 MP3 HE-AAC VQ Apple Lossless
MOVMacで動画を扱う場合の標準的なファイル。MP4ベースになっており、MPEG-4の映像コーデックを利用することもできる。.mov .qt(映像) MPEG-4 H.264 Motion JPEG (音声) AAC MP3
MPEG-2 PSDVD等の記録形式として利用されている。 蓄積メディアを前提に作られたビット誤りが小さい前提での規格。.mpg .mpeg .mpe .m2p(映像) MPEG-1 MPEG-2 (音声) MPEG1 Layer-II MPEG2 Layer-II LPCM AC-3
MPEG-2 TS世界各国のデジタル放送規格の多くで採用されている形式。Blu-rayやハイビジョンテレビのレコーダーなどで使われている.mpg .mpeg .mp2 .m2p .m2t .mpt .m2ts .mts .ts .vob(映像) MPEG1 MPEG2 MPEG4 H.264/AVC (音声) MPEG1 Layer-II MPEG2 Layer-II MPEG4 AAC-LC LPCM AC-3 MP3
AVI古い形式のものはファイルが不完全な状態だと再生できない、最大2GBの容量制限などの制約があるので要注意。こちらもコーデックが非常に多い。.avi .divx(映像) MPEG1 MPEG2 MPEG4 Motion JPEG DivX 3-5 XviD (音声) MPEG1 Layer-III MPEG2 Layer-III PCM AC-3

1-5. フレームレート

フレームレートとは、読んで字のごとく、1秒間に何コマの画像(フレーム)が収録されているかということを示す値のことで、フレームレートの値は◯fpsまたは◯f/sというように記載します。つまり、1秒間に30枚の画像(フレーム)が収録されているのであれば、30fpsまたは30f/sという数値になります。

 

フレームレートの値が大きければ大きいほど、動画が滑らかに動き、フレームレートの値が小さければ小さいほど、カクカクとした動きになります。つまり、フレームレートは、動画像の表示の滑らかさを表している値とも言い換えることができます。

 

右の動画はフレームレートによる動画の違いを再現したものです。

 

フレームレートは大きければ大きいほど良いというわけではありません。フレームレートの値が大きい動画は、その中に記録されている画像の枚数が多いことになり、当然データ量も大きくなります。また、人間の目や、それを投影するディスプレイ側の限界、媒体側の技術仕様もありますので、適切な値に設定する必要があります。

 

現在使用されているフレームレートの中で代表的なものとしては、映画の撮影やアニメなどで採用されている24fpsや、日本国内のテレビ放送で使用されている29.97fps、最近の民生カメラなどで主流の59.94fpsなどがあります。その他、主に欧州向けの25fpsなどもあります。

 

 

フレームレート

ちなみに、一部中途半端な数字のフレームレートが存在しているのは、テレビ放送が白黒からカラーへ移行するにあたり、技術的な制約があったことに起因しています。実際、放送以外の用途では、30fpsや60fpsなどが多く使われています。

 

一部のプラットフォームでは、入稿できる動画のフレームレートの上限が30fpsと決められている場合もありますが、スマホの動画撮影機能やYouTubeが60fpsに対応するなど、高フレームレート化は現在も進んでいます。なお、次世代の放送規格として開発が進められているスーパーハイビジョンは120fpsという更に高い値になっています。

1-6. フィールドオーダー(描画方式)

動画の描画方式には大きく2種類「プログレッシブ」と「インターレース」があります。

 

描画方式は、解像度の縦サイズまたは、フレームレート(もしくはフィールド数)とのセットで表記されることが多く、例えば1280×720のプログレッシブは「720p」、1920×1080のインタレースは「1080i」、24fpsのプログレッシブは「24p」、60フィールドのインタレースは「60i」というように表現されます。

 

動画はたくさんの点の集合体で構成されており、その点を横線の塊(これを走査線といいます)に分け、描画方式にしたがって表示しています。プログレッシグとインターレースではこの走査線の表示方法に違いがあります。

フィールドオーダー

現状、YouTubeをはじめとしたほとんどの媒体がプログレッシブ形式を推奨しているため、WEB動画においては、基本的にプログレッシブ形式を使用すると覚えておけば問題ないでしょう。

 

よって、プログレッシブでは1枚の画像の走査線が、インターレースの2倍になるので、動画像がより鮮明になり、インタレースでは、動画像の鮮明さは劣るものの、より少ないデータ量で動画をなめらかに表示することができます。

1-7. ビットレート

ビットレートは、通信回線などでも使われる単位ですが、動画においては、1秒間にどれくらいのビット数で映像データや音声データを表現しているかを示す値のことで、ビットレートの値は◯bps、◯b/sまたは◯bit/sと記載します。

 

ビットレートの値が大きければ、1秒間に詰め込んでいるデータ量が多いことになりますので、当然映像や音声の質が上がります。一方、ビットレートの値が小さければ、映像や音声の質は下がりますが、動画の容量は小さくなります。

 

動画の解像度が大きくなると、よりディテールの描画が目立つようになりますので、大きい解像度の動画ではより大きなビットレートが必要になります。

また、ビットレートには大きく2種類、固定ビットレート(CBR)、可変ビットレート(VBR)というものがあります。固定ビットレート(CBR)は、ビットレートを一定にして圧縮する方法、可変ビットレート(VBR)は、ビットレートを可変させて圧縮する方法を指します。

 

CBRは常に一定のビットレートであるため、予め動画サイズを予測しやすいなどのメリットがありますが、ビットレートを多く必要とするシーンでビットレートが足りなかったり、ビットレートがあまり必要ないシーンで、多くのビットレートを使ってしまうといったデメリットがあります。一方VBRは、シーンに応じてビットレートを調整するため、ファイルサイズあたりの画質を高めることができますが、ファイルサイズを予測できないなどのデメリットがあります。なお、YouTubeでは可変ビットレート(VBR)が推奨されています。

 

また、VBRのエンコーディング(ファイルの圧縮・符号化)の方法では、ファイル内容を解析せずにエンコードする「1パスエンコード」と、エンコードする前にデータを解析したうえで適切なビットレートを割り当ててエンコードする「2パスエンコード」というものがあります。2パスエンコードでは事前に分析を行うため、エンコードにかかる時間が長くなりますが、高画質な動画を生成できます。

ビットレート

2. 各プラットフォームでの推奨形式

リンクを掲載していますので、最新情報・詳細情報は公式ヘルプを参照してください

2-1. YouTube

YouTubeでは幅広いファイル形式をサポートしていますが、ヘルプページにておすすめのエンコード設定を掲載しているので、そちらを参考にするのが良いでしょう。

2-2. Facebook / Instagram

Facebookでも同様に幅広いファイル形式をサポートしています。動画は1080p以下、MP4音声は128kbps以上のAACが推奨されています。アスペクト比は画面占有率などを意識して検討しましょう。

2-3. X (旧:Twitter)

X(旧:Twitter)でも主にH264のMP4を利用します。広告と通常投稿で若干仕様が異なるため注意が必要です。

3. 今後の動画フォーマットの動向

リンクを掲載していますので、最新情報・詳細情報は公式ヘルプを参照してください

近年の動画体験の急速な発展と歩みを合わせて、動画のフォーマットも更に進化していくと考えられます。

 

現在は、H264コーデックが広く使われています。高い圧縮効率に加え、H264の唯一のパテントプールであるMPEG LAが「ユーザが無料視聴できるネット配信動画」に対してのライセンス料を免除したり、Cisco社がOpenH264 バイナリの利用によるライセンス料の肩代わりを発表したことも普及に寄与していると考えられます。

 

一方、昨今の4K放送や8K放送では、2013年に国際標準化されたH.265/HEVCフォーマットが使用されています。2018年の3月にHEVC Advanceが、H265/HEVCを利用した非物理的な動画配信において(ストリーミングや放送など。物理メディアにおいてはそのまま適用される。)ライセンス料を廃止するという発表をしていますが、HEVC Advanceの他にもMPEG LAをはじめとした複数のパテントプールや企業が存在するため、ライセンス料の支払いは免れず、ライセンス問題は根本解決に至っていません。これは、ビジネスで活用するうえでの大きな足かせといえます。

 

それに対して2018年3月にAlliance for Open MediaがAV1というロイヤリティフリーをフォーマットを公開し、グローバルでの普及を目指しています。ストリーミングテクノロジーを提供するBitmovinの調査によると、HEVC比で30~43%ほどビットレートを削減できるという報告も出ており、今後の動向に注目が集まっています。

 

動画配信ビジネス行う多くの事業者側が課題にしているのが通信量です。新たな圧縮技術がこの問題を解決する糸口になれば、各社の動画を使った取り組みやユーザー体験もより良いものになっていくのではないでしょうか。

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