アニメーションの制作費の相場。誰でも気になるところですが、動画制作は価格の設定が非常に難しく、「相場」というものも制作与件によって大きく変わってくるのが実情です。「これさえ押さえれば大丈夫!アニメーション動画14種類の制作手法」で分類したアニメーションの種類に合わせて4つの費目の価格感、そして1分~3分の動画を制作した場合の概ねの費用感を徹底的に説明します。
1分尺の制作費のまとめ
アニメ種類 | ~1分尺の制作費 | 最低制作期間 |
フルアニメ・リミテッドアニメ | 150~250万円 | 4カ月~ |
パラパラ漫画・口パクアニメ | 60~80万円 | 2.5カ月~ |
ドット絵アニメ | 60~80万円 | 2.5カ月~ |
手書きアニメ | 80~150万円 | 4カ月~ |
ロトスコープアニメ | 200~350万円 | 4カ月~ |
イラストアニメ・キャラクターアニメ | 20~35万円 | 1.5カ月~ |
タイポグラフィックアニメ・ロゴアニメ | 20万円~(10秒尺) | 1カ月~ |
ホワイトボードアニメ | 60~80万円 | 1カ月~ |
ピクトグラムアニメ | 20~35万円 | 1.5カ月~ |
アイソメトリックアニメ | 60~80万円 | 2カ月~ |
3Dアニメ・CGアニメ | 100~150万円 | 3カ月~ |
ストップモーションアニメ・クレイアニメ | 70~100万円 | 2カ月~ |
スライドショーアニメ | 10~30万円 | 2週間~ |
上の表は代表的なアニメ種類別の1分制作時の相場です。ご覧いただくとわかる通り、アニメの種別によってかなりかなりのバラツキがあることがわかります。また、一見違う種類のアニメに見えても価格がそれほど変わらないように見えるものもあるかと思います。しかし、作るアニメによって「費用のかけどころ」が違うため、1分尺で見た場合には同じような価格であっても、尺が伸びていくと費用が大きく変わるものもあります。
どのようなロジックで費用が掛かってくるのか、費目の視点も含めてご紹介します。
費用項目の考え方
今回、アニメーションの価格相場を表現するにあたり、主に4つの費用項目に分けて表現しています。
企画費:台本・絵コンテ・構成など
いわゆる「企画」の部分にかかる費用になります。ゼロから作ることもあれば、依頼主が準備した資料や仮台本などを参考にリライトするケースもあります。
台本や構成案が事前に準備されている場合は、手直し程度で次の段階に進むこともありますし、キャラクターが演技をする場合には「脚本」としてセリフを構成し、シーンやカットを手書きで書き出すこともあります。
素材費:イラスト制作、レンポジなど
映像化するための写真やイラストなどの準備の費用です。スライドショーやロゴアニメなどは完全支給といったケースもありますし、商用動画用のイラスト素材やレンポジと呼ばれる写真素材を購入して加工することもあります。もちろん完全に書き起こすケースも少なくありません。
音声費:ナレーション・BGM・SE・整音(MA)
ナレーション形式で進む場合もあれば、キャラクター演技や掛け合いが入ることもあります。収録の仕方は遠隔でのデータ収録形式もあれば、スタジオ立ち合いで細かくチェックしながらの収録もあります。
BGM/SEに関しても、選曲作業から楽曲の利用許諾、サウンドエンジニアによる効果音の当て込み、ナレーションと合わせての整音作業などが入ってきます。簡易な制作の場合にはアニメエディターが調整するケースもあります。
アニメ化作業
いわゆる動画化の作業になります。今回「分当たり」で概算を出しています。
アニメ制作では固定的にかかる費用と尺あたりで変動的にかかってくる費用があり、手書きやリミテッドアニメなどはコマごとに動きを調整していくため変動費部分が非常に高額になってきやすいです。一方でモーションアニメはアニメとして動かすオブジェクトの数や動きの細かさなどにより多少ばらつきが生まれてきます。
アニメーションの種類別費用
それぞれのアニメについて、費目ごとの価格と1分、2分、3分での概算をまとめてみました。
フルアニメ/リミテッドアニメ
企画費 | 素材費 | 音声費 | アニメ化 |
50万円~ | 50万円~ | 20万円~ | 50万円/分 |
1分尺総額 | 2分尺総額 | 3分尺総額 | 制作期間 |
150~250万円 | 200~350万円 | 250~500万円 | 4カ月~ |
セルアニメと呼ばれる1コマごとに少しずつ動きを付けたイラストを連続して撮影するアニメですが、以前は画面内すべての絵を動かすフルアニメ、部分的に動かすリミテッドアニメと分類されていましたが、近年では制作のデジタル化やCGの活用などで、その境目はあいまいになってきています。
制作プロセスも非常に複雑であり、原画制作、中割、背景美術、エフェクト、コンポジットというようなTVで見るようなアニメーションになるまで様々な工程を経ていく必要があります。それに伴い、設計図ともいえるコンテや、キャラデザインといったプリプロダクション的な作業(アニメ制作までの準備作業)も膨大になるため、このプリプロダクションにかかる費用も高額になってきます。
パラパラ漫画・口パクアニメ
企画費 | 素材費 | 音声費 | アニメ化 |
15万円~ | 20万円~ | 10万円~ | 10万円/分 |
1分尺総額 | 2分尺総額 | 3分尺総額 | 制作期間 |
60~80万円 | 70~100万円 | 80~120万円 | 2.5カ月~ |
このアニメ手法で特徴的なのは、素材制作費が他の費目に対して高額になりやすいということです。パラパラ漫画・口パクアニメのほとんどは「原画」となるイラストの費用が大きく占めており、クオリティの大部分はこのイラストの品質に影響します。その中で「口」や「瞬き」など、限定的にアニメを設定する形になるため、アニメ化にかかる費用は比較的抑えやすくなります。とはいえ、3分を超える制作の場合には、シーン数の増加に伴い素材制作費も高くなってくるので、長尺の制作やシリーズ化を前提とした場合には予め制作会社と調整しておくことが必要になってきます。
ドット絵アニメ
企画費 | 素材費 | 音声費 | アニメ化 |
15万円~ | 20万円~ | 10万円~ | 10万円/分 |
1分尺総額 | 2分尺総額 | 3分尺総額 | 制作期間 |
60~80万円 | 70~100万円 | 80~120万円 | 2.5カ月~ |
ドット絵アニメもアニメ化の制作技術的にはあまり高度なものは必要ないのですが、ちょこまかとした動きを表現するためのオブジェクトの操作数が多くなるため、アニメ化の作業量自体は多くなる印象です。単体の静止画イラストとしてのドット絵クリエイターは増えてきていますが、動きのループパターンを書き起こせるクリエイターはまだまだ多くないため、ドット絵自体の制作費は比較的高くなってきます。
手書きアニメ
企画費 | 素材費 | 音声費 | アニメ化 |
30万円~ | 0万円~ | 20万円~ | 30万円/分 |
1分尺総額 | 2分尺総額 | 3分尺総額 | 制作期間 |
80~150万円 | 120~200万円 | 150~300万円 | 4カ月~ |
手書きアニメは個人のアニメクリエイターがワンストップで制作するため、素材制作とアニメ化費用に明確な区分けはありません。とはいえリミテッドアニメ同様に、プリプロダクションの工程が非常に重要になってくるため、脚本やコンテなどの部分の費用が高くなってきます。また、作業量が多いにもかかわらず分業が難しいため、制作納期も他のアニメに比べると長くなってきやすいのが特徴です。
ロトスコープアニメ
企画費 | 素材費 | 音声費 | アニメ化 |
50万円~ | 100万円~ | 20万円~ | 50万円/分 |
1分尺総額 | 2分尺総額 | 3分尺総額 | 制作期間 |
200~350万円 | 300~500万円 | 400~700万円 | 4カ月~ |
ロトスコープアニメは実際の役者が演技したものをトレースしてアニメ化するため、実写の工程とアニメ化の工程が二重に発生する大がかりな制作となります。そのため、コンテや脚本などのプロプロダクションだけでなく、素材制作としての実写撮影、そしてそこからセルアニメと同等の制作工程を経ていくため、短尺であっても非常に高額になってきやすいです。
イラストアニメ・キャラクターアニメ
企画費 | 素材費 | 音声費 | アニメ化 |
5万円~ | 0万円~ | 3万円~ | 10万円/分 |
1分尺総額 | 2分尺総額 | 3分尺総額 | 制作期間 |
20~35万円 | 30~60万円 | 40~80万円 | 1.5カ月~ |
モーションアニメの分野は、全般的にアニメ化作業が非常にリーズナブルなのが特徴です。モーションアニメの場合、商用動画用のイラスト素材を購入してアニメ化するなどでコストを抑えることが可能です。
アニメ化の作業も近年、モーショングラフィックを使えるクリエイターは非常に増えてきており、価格を抑えて制作することが可能です。ただしアニメ化の作業工程で、キャラクターの動きにリアリティを持たせたり、曲線的な動きを多用するような場合には、高度な技術を持つエディターが必要となるため、高額になってくるケースもあります。
タイポグラフィックアニメ・ロゴアニメ
企画費 | 素材費 | 音声費 | アニメ化 |
5万円~ | 0万円~ | 0万円~ | 30万円/分 |
1分尺総額 | 2分尺総額 | 3分尺総額 | 制作期間 |
20万円~(10秒尺) | – | – | 1カ月~ |
タイポグラフィックやロゴアニメはそもそも非常に短尺での制作をするケースがほとんどです。しかしながら、短尺故にコンテだけでは伝えにくく、アニメ化してみないとレビューが難しいということもあり、高い品質のものを制作する場合には案出しのタイミングで複数案制作するなどの工程が発生するケースもあり、低予算の場合には類似事例などで方向性を固めてから制作するという形になります。
ホワイトボードアニメ
企画費 | 素材費 | 音声費 | アニメ化 |
15万円~ | 15万円~ | 10万円~ | 15万円/分 |
1分尺総額 | 2分尺総額 | 3分尺総額 | 制作期間 |
60~80万円 | 70~100万円 | 90~120万円 | 1カ月~ |
ホワイトボードアニメの場合、コンテおよびグラフィック制作段階で概ね完成動画のイメージが付きやすいため、素材制作段階にできる限り完成品に近いグラフィックを作りこむというケースが大半です。ただしグラフィックは白黒もしくは限定されたカラーでの線画のため、フルカラーの書き起こしイラストに比べると費用を抑えることができます。
ピクトグラムアニメ
企画費 | 素材費 | 音声費 | アニメ化 |
5万円~ | 0万円~ | 3万円~ | 10万円/分 |
1分尺総額 | 2分尺総額 | 3分尺総額 | 制作期間 |
20~35万円 | 30~60万円 | 40~80万円 | 1.5カ月~ |
ピクトグラムアニメは単純化された平面的なグラフィックを活用するため、素材費用を抑えることが可能です。とはいえ、単純化されているが故にピクトグラムが何を表しているのかを的確に視聴者につたえるための動きの設定は非常に大事になってきます。素材のほとんどがシンプルなアイコンがメインとなるため、ダイナミックな表現が難しく、テロップによるフォローが必要なケースも多くあります。
アイソメトリックアニメ
企画費 | 素材費 | 音声費 | アニメ化 |
15万円~ | 15万円~ | 10万円~ | 20万円/分 |
1分尺総額 | 2分尺総額 | 3分尺総額 | 制作期間 |
60~80万円 | 70~100万円 | 90~120万円 | 2カ月~ |
おしゃれな印象を与えるアイソメトリックですが、動画のテーマによっては素材をゼロから書き起こさなくてはならないケースがあったり、表現する内容によっては3D的な動きを描けるエディターを入れなくてはならないなど、見積もりがしにくい表現方法だったりします。街並みや一般的な室内などの商用素材である程度表現可能な場合には価格を抑えることも可能ですが、コンテ段階まで来ないと正確な金額算出がしにくいという難しさがあります。
3Dアニメ・CGアニメ
企画費 | 素材費 | 音声費 | アニメ化 |
15万円~ | 50万円~ | 10万円~ | 20万円/分 |
1分尺総額 | 2分尺総額 | 3分尺総額 | 制作期間 |
100~150万円 | 150~200万円 | 200~300万円 | 3カ月~ |
3Dの場合、モデリング(キャラや物体の3Dモデルを書き起こす作業)から行うのか、CADなどで作られた素材があるのかなど、どの工程から始められるかによってかなり費用にバラツキが起きます。キャラクターを動かしてなんらかの演技をさせる場合、モデリング作業だけでなくリギング(キャラクターの関節部を動かす設定作業)なども発生したり、シーン背景を変える場合にはその分のモデリングを行うなどの作業が発生するため、構成案とセットで見積もる必要があります。
ストップモーションアニメ・クレイアニメ
企画費 | 素材費 | 音声費 | アニメ化 |
20万円~ | 30万円~ | 3万円~ | 10万円/分 |
1分尺総額 | 2分尺総額 | 3分尺総額 | 制作期間 |
70~100万円 | 80~150万円 | 100~250万円 | 2カ月~ |
ストップモーションの場合、どちらかというと「実写」の撮影が素材費として発生します。撮影の1カットは基本的には定点カメラを設定してコマ撮りをしていくため、長尺になってくるとカット数に応じての撮影セッティングが必要となってくるため、階段的な費用の上がり方をしていきます。
スライドショーアニメ
企画費 | 素材費 | 音声費 | アニメ化 |
5万円~ | 0万円~ | 3万円~ | 5万円/分 |
1分尺総額 | 2分尺総額 | 3分尺総額 | 制作期間 |
10~30万円 | 15~40万円 | 20~50万円 | 2週間~ |
スライドショーの場合、素材の有無やCGによる装飾の豪華さなどによって価格が決定します。台本に合わせてスライドを進行させる場合には、画像の表示時間によって素材数を増減させたり、単調にならないように動きを追加するなどの作業が発生するため、長尺になってくると尺を満たすための素材の費用や絵持ちをさせる装飾等の費用が掛かってくるため、思いのほか費用がかかるケースもあります。