WEB上で動画を見るとき、なかなか再生されず動画を閉じてしまった経験がある方も多いのではないでしょうか。
動画を最後まで見てもらうためには、以下の図のように、再生途中で発生する通信環境の問題や動画の再読込など、様々な障壁を乗り越えてもらう必要があります。
動画をオンラインで使用する際には、これらの障壁を理解したうえで、動画の設計や適切なホスティングサービスの選定を行う必要があります。
今回は、米の研究者Ramesh K. SitaramanとS. Shunmuga Krishnanが研究発表した『Video Stream Quality Impacts Viewer Behavior』という学術論文の中から、具体的にどれくらいの人が途中で動画を見るのをあきらめてしまうのか、4つのデータをご紹介させていただきます。
1.動画の再生開始までの時間と離脱率
参照:Video Stream Quality Impacts Viewer Behavior:Inferring Causality Using Quasi-Experimental Designs Figure 10
オンライン動画の再生開始まで2秒以上かかった場合、再生までにかかる時間が1秒増えるごとに離脱率が5.8%増え、最初の10秒までで離脱率が40%に達したあと、徐々に収束しながら100%に近づくという結果が出ています。
視聴者が動画が再生されるまで待つことが出来る時間は、どんなに長くても10秒までと考えた方が良いでしょう。
2.動画の尺と離脱率
参照:Video Stream Quality Impacts Viewer Behavior:Inferring Causality Using Quasi-Experimental Designs Figure 11
こちらは先ほどのデータを、長い尺の動画(30分以上)と短い尺の動画(30分未満)で違いがあるかを調べたものです。
短い尺の動画が再生されないことによる離脱率は、長い尺の動画が再生されないことによる離脱率を全体的に上回っています。また、短い尺の動画においては、11.5%の視聴者が長い尺の動画よりも早く再生を諦めており、10秒経過時点では約10%程度上回っています。
「短い(≒軽い)動画なのに何で再生されないんだ」という心理的な要素が作用している可能性もあるかもしれません。
長い尺の動画が再生されないことについて、比較的視聴者は寛容ではあるものの、20-30秒近くで視聴者の半数が失われることはとても大きい損失といえます。
3.再生中断時間と視聴時間
参照:Video Stream Quality Impacts Viewer Behavior:Inferring Causality Using Quasi-Experimental Designs Figure 15
参照:Video Stream Quality Impacts Viewer Behavior:Inferring Causality Using Quasi-Experimental Designs Figure 16
上記のデータは再生中断が発生した場合の視聴時間への影響を表しています。
動画全体の長さの1%の再生中断や再読込が発生するごとに、その動画の視聴時間が5%程度短くなっていくという結果が出ています。例えば動画の全体の長さが30分の場合では、再生中断や再読込が18秒に達するごとに5%の人が視聴を諦めることになります。
補足:
P-Value:P値。大まかに言うと、値が小さいほど信頼性が高いということ。
4.通信環境と離脱率
参照:Video Stream Quality Impacts Viewer Behavior:Inferring Causality Using Quasi-Experimental Designs Figure 13
こちらのデータでは、光ファイバー接続の視聴者は、モバイル接続の視聴者に比べると、38.3%多く視聴をあきらめるという結果が出ています。
確かな理由は分かりませんが、常に高速通信しているユーザなので、なかなか再生されないことによるストレスが大きいということではないでしょうか。
まとめ:動画を見てもらうためには、視聴者の環境も重要
これらの研究結果からわかることは、
視聴者は我慢強くない!ということです。
WEBで動画利用する場合は、動画を見る側の通信環境や視聴端末やアップロードしているサーバの状況を考慮して、ストレスなく見れる動画を提供することが重要になってきます。
参考:
Ramesh K. Sitaraman S. Shunmuga Krishnan
Video Stream Quality Impacts Viewer Behavior:Inferring Causality Using Quasi-Experimental Designs