Webへの掲載だけでなく、SNSやゲームをはじめとした動画広告媒体など、動画を活用する機会が増える中で、動画制作会社やフリーランスのクリエイターも増えてきました。
実績を見ると「好みとセンス」といった選び方をしてしまいがちです。その見方は本当に正しいのでしょうか。「カッコいいけど思ったより費用が掛かった」「安かったけど思った動画にならなかった」そんなミスマッチを防ぐために、今回はアニメの実績の見方について解説します。
Webへの掲載だけでなく、SNSやゲームをはじめとした動画広告媒体など、動画を活用する機会が増える中で、動画制作会社やフリーランスのクリエイターも増えてきました。
実績を見ると「好みとセンス」といった選び方をしてしまいがちです。その見方は本当に正しいのでしょうか。「カッコいいけど思ったより費用が掛かった」「安かったけど思った動画にならなかった」そんなミスマッチを防ぐために、今回はアニメの実績の見方について解説します。
様々なフリーランスクリエイター/動画制作会社が動画実績を掲載していますが、どのような基準で掲載しているのでしょうか。もちろん、掲載基準やクライアントの許可の有無などあるかと思いますが、沢山の会社の実績を見ていた経験を書きたいと思います。
許諾の関係や自身の実力の見せやすさなどもあり、フリーランスの方はサンプル作品が多く掲載されています。とはいえ、サンプル作品のほうがクリエイター個人としての実力が出やすく、動画制作のクセが見て取れます。特に思い入れが強そうな作品ほどその傾向が強いように思われます。そのためサンプル作品はアニメーションの技術力が非常に出やすいので、真っ先に見ています。
一方で、実際に取組んだ実績は予算や納期の制限により、クリエイター自身の技術力が必ずしも反映されていないことも多かったり、対応範囲が不明瞭な場合が多く、純粋にアニメーション制作部分だけなのか、イラストも描いているのか、シナリオや台本は誰が書いたのかなどが分からないため、見る際の優先度は低くなります。
動画制作会社の場合には、技術力や対応力だけでなく実績による集客力も大事になってくるため、制作規模の大きな作品や見栄えのする作品
が多く出ています。そのため、どちらかというとコストパフォーマンス的な視点で見ることが多いです。
トップに表示されているような実績であれば「同じ予算をかけて同じような作品が作れるのか」という視点であったり、時には「どうしたらこの予算でこの作品が作れるのだろう」と考えるきっかけになったりします。
弊社への問合せ状況を見ていると、お客様は皆さま非常に冷静に実績を見ていると思っています。地味な作品であっても、自社のサービスにマッチしている絵柄やデザイン、流れなどを観察して問い合わせてきているという印象です。
弊社でもトップページは見栄えのする作品を乗せていますが、実績ページでは様々な作風、使い方のバリエーション、予算規模をできる限り多く掲載できるようにしています。
このように、アニメーション動画実績の掲載には目的や意図があります。その実績はどのような視点でみるべきか、2つの視点を解説します。
わかりやすい説明の8割は「構成とシナリオ」で決まります。明確なシナリオがあると、動画のシーン作りも明確になるので、結果として動画全体としてのわかりやすさに繋がります。そのうえでシナリオ構成は、動画の利用目的に応じて使い分けられます。
例えば「すでに製品や商品を知ってる方に向けた比較検討のための営業ツールとして使いたい」という比較検討ツール目的であればPREP法でシナリオ構成したものがマッチします。
「展示会やWeb来訪者向けに使いたい」というニーズ探求目的であれば、課題の共感を冒頭に出すIREP法が有効です。
1~2分程度の動画の場合、ほとんどの動画はどちらかのシナリオ構成になります。そのうえで、初めて見知った業界の動画であっても、聞いただけでもなんとなくイメージがつくものになっているか、というのは実績を見るうえでの判断基準になってきます。
構成名称 | 論理展開 | 特徴 | 動画での使われ方 |
PREP | Point/Reason/Example/ Point | 先に結果を伝え、その理由、具体例、改めて結果を伝える。理由や根拠が重要な報告で使われやすい。 | 比較検討ツール |
IREP | Issue/Reason/Example/Point | 問題点・論点をつたえ、それが問題点になる理由、具体例、そのうえで「どうしたいか」の結論を伝える。悩み・ペインに対する課題解決を提案するときに使われやすい。 | 展示会、Web掲載 |
DESC | Describe/Express/Suggest/Consequence | 状況、環境や心境を伝え、相手にどのような行動をとってほしいか(もしくは自分自身がこうしたい)を伝える。 | オウンドメディア |
アニメの技術力は実績の見方さえ分かればある程度判別がつきます。そして後述しますが、技術力は対応力の高さにも影響します。
私達も一緒に仕事をするクリエイターや協力会社を探す際に動画実績を見ていたりします。実際にどこを見ているのでしょうか。 具体的には「オブジェクトの動き」と「カメラワークのバリエーション」
を見ています。
セルアニメはクリエイター(アニメーター)が手書き・デジタル問わずに、各オブジェクトの差分を少しずつ書き重ねたパラパラ漫画で構成された動画です。
誰もが一度くらいは「棒人間が走るパラパラ漫画」を描いた経験はあるのではないでしょうか。その時、カメラはほとんどの場合、真横から書かれたものではなかったでしょうか。
もし「斜め上のカメラから棒人間が走る絵を書いてみてください」といわれたら、難しいと思います。セルアニメの場合には、シーンごとに斜め上から見ることもあれば真横から見ることもあります。カメラワークとは何なのか、具体的に見てみましょう。
この動画では、1つのシーンでカメラ自体が動くカットがあり非常に高い技術が使われています。一方で、彩色を最低限にするなど、コストを圧縮する工夫もしています。言い換えれば、予算さえ許すのであればまだまだ動画としてのクオリティを上げることがでるのです。
こちらは、高い技術力を持ったクリエイターが用途に応じて2パターン作った動画です。キャラクターのデザインは支給のものを使っています。どちらがアニメーションの技術として高度でしょうか。
キャラクターアニメ1
キャラクターアニメ2
正解は「2」のほうです。具体的にはキャラクターが登場したときにブレーキをかけて止まる数フレームのシーンに技術が見られます。慣性に逆らっているので、少し顔が残り、傾いた体を右足を踏み込んで整えます。この数フレームを実現するためには、ブレーキがかかる際の人の動きがイメージにあり、それをモーションアニメ化するという工程を実現する技術が必要になってきます。
一方で「1」については動画としてはきらびやかですが、各オブジェクトのモーションは派手さが優先されているため、必ずしもオリジナルの動き(モーション)である必要はありません。とはいえ、動画として見栄えがしないかといえばそんなことはありません。あくまでも、技術としては「1」より「2」が高度であるというだけの話です。
このように、動画中の数シーンに「実際の動きをイメージし、それをモーションアニメに落とし込めるか」ということを技術力としてみることができるのです。このアニメーターは、支給されるキャラクターが変わっても多彩な動きを実現することができるのです。
どうしても動画実績を見る際に最初に目が行き届きがちなのが「デザインや豪華さ」です。しかし、セルアニメ、モーションアニメの技術の見方を書かせていただいたように、デザインや豪華さはかけるコストを変えれば十分に対応可能です。
しかし現実には予算の壁があるため「どこに予算をかけ、どこを削るのか」ということが大事になってきます。
次の事例は、ある1つのシナリオを動画としてリファインした事例の一部です。
見ていただければわかるように、動画としての工夫ポイントの違いはほとんどなく、単純に絵の違いだけで印象が変わっています。
デザインやトンマナは流行り廃りや好みもあるためデザインだけで選ぶのは危険です。また予算の関係でイラスト制作や素材制作は真っ先に削られることも多く、フリー素材を中心に動画が作られることが多くあります。逆の言い方をすれば、デザインは予算次第でどうにでもなると考えることもできます。
動画実績をデザインや豪華さ、好みだけで選んでしまうと、カッコいいけど分かりづらい動画、予定よりも費用がかかる動画、というものになっていかねないのです。
構成力が高ければ早い段階でイメージする動画の着手に入ることができます。また、テキストだけで構成されたシナリオの段階で動画がイメージできるということは、作画に入った段階でブレが少なく、手戻りも少なくなります。
技術力があれば、もちろん対応速度が速いこともありますが、何より急な要件変更があった場合にも引き出しが多く、現実的な対応が可能になります。
構成力・技術力があると、納期だけでなく予算についても対応が広がります。オブジェクトの動きやトランジションをプリセットで済ませたものにする、構成をできる限り簡素化してそもそもの尺を短くする、などです。納期・費用についても是非相談してみてください。