高齢化が顕著に進んでいる建設業界では、「時間外労働の上限規制」いわゆる2024年問題だけでなく、団塊世代が後期高齢者となり熟練工が大量に引退する2025年問題と呼ばれる労働者不足がいよいよ本格的になってきています。熟練の建設労働者が減ってきてる一方で、建設需要は衰えておらず若手人材の取り合いはますます進んでいくと考えられています。今回は「建設業」にフォーカスを当ててSNSでの採用活動を進めている企業の事例をご紹介します。
若手の人材不足をカバーする施策「SNS採用」とは?
若手の人材不足をカバーする施策として注目を浴びているのが「SNS経由での採用活動」です。
従来型の就職・転職ポータルサイトでは求職のための登録作業や応募企業の下調べなどが発生するため、タイムパフォーマンスを大事にするZ世代には敷居が高いと思われてしまうこともあります。求職者がPC操作や文書制作を得意としていない場合には応募までの敷居が非常に高くなってしまうことがあります。
一方でSNSでは企業と求職者がダイレクトにコミュニケーションを取ることができるため、文書制作などがあまり得意でなくても人柄ややる気を会話のやり取りで伝えることができます。またSNS上に掲載されているコンテンツにより会社の雰囲気を事前に知ることができたり、コメントのやり取りをみることで受け答えに対する距離感などを事前につかむことができます。
生まれたころからインターネットが当たり前であったデジタルネイティブでもあるZ世代の求職者にとってはSNSでダイレクトにやり取りするのは当たり前の行為であり、従来型の就職・転職ポータルサイト経由でのやりとりよりも敷居が低いのもポイントです。
そのような理由から、体を動かすことが好きであったり、人とのコミュニケーションが好きであったり、成長や学びに貪欲であったり、履歴書だけでは表現できない人間性やキャラクターなどを大事にする建設業界にとって、SNS採用はうってつけのツールなのです。
株式会社ハマテック
大阪にある建築現場の足場などの設営やレンタルを行っている会社です。こちらも「うちの社長が先生すぎる/はまなか社長」という企業アカウントっぽくない仕立てですが、様々なシチュエーションから「社長のキャラクターを引き出しつつ企業の魅力を伝える」というアプローチで構成された動画で構成されています。「退職届を出してみたドッキリ」は真摯に心配し次の就職先まで一緒に考えようとしてくれる社長の一面を引き出してみたり、そのまま退職届を笑顔で受け取って出演するスタッフが慌てる社員をいじるなど、社長と社員の適度な距離感がわかるコンテンツになっています。それ以外にも、社長の人柄、職場の雰囲気や働きやすさが存分に伝わるコンテンツが沢山あります。
@humantec.1 本気で焦りました😑by社長 #建設会社 #建設業 #上司と部下 #職人募集 ♬ オリジナル楽曲 – うちの社長が先生すぎる – うちの社長が先生すぎる/はまなか社長
株式会社翔星建設
奈良県にある土木工事の会社です。ズバリTiktokから入社した社員へのインタビューコンテンツが直近インプレッションを増やしています。入社された方のインタビューから見えるのはTiktokの社員出演動画を見ることで感じた会社の雰囲気や働きやすさが応募にあたっての重要なポイントであったということです。仲間と一緒に何かを作る仕事では特に「この人と一緒に働きたい!」と感じることがとても大事だと気づかせてくれる、学びが大きい動画です。
@shosei.kensetsu TikTokから2人目が採用されました! #翔星建設 #建設業 #職人 #採用 ♬ オリジナル楽曲 – 翔星建設のなかまたち
株式会社TAKUMI
兵庫県尼崎市の左官業の会社さんです。急な坂道で丸いわっかのような模様を作る工程を映した動画は2024年7月時点で2000万再生されています。おそらく専門家から見れば当たり前の作業なのかもしれませんが、一般人から見れば「知らなかった」「神業!」だったりすることも多くあります。「自社の技術力って何だろう」と考えてみたとき、会社の中では当たり前のことも外から見たら物凄いこと、という視点を思い出させてくれる動画です。
SNSショート動画でZ世代の採用を進めるには
今回の事例調査で感じたのは、建設業界がZ世代に向けたコミュニケーションを加速化させていて、また令和の時代にあった働き方を真摯に模索しているということです。
3K(キツイ・汚い・危険)というイメージを払拭するだけでなく、会社全体で楽しく働いていることを感じさせる動画が沢山見られました。
「今更SNSで動画を始めても、他社の真似になってしまうのでは?」という不安はあるかもしれません。ですが、似たようなネタであっても、働いている人・企業風土によりその見せ方や答えは変わってきます。独自性を出しにくい業界の中でも、人や取り組みなどにフォーカスすることで、組織の魅力を伝えることに成功している事例だと思います。