前回、就職・転職活動におけるSNSの活用について調査しましたが、そもそも採用市場で「動画」はどのように受け入れられているのかを今回改めて調査しました。3年以内に就職活動を経験したZ世代78名に動画の視聴状況についてアンケートをしました。
調査方法:インターネット調査(外部調査期間のモニター利用)
調査対象:3年以内に就活活動をした20代78名
居住地域:都内
採用動画視聴者の3割以上が応募や志望にプラスの影響
動画の視聴によって志望度に影響を与えたかどうかの質問では「エントリーのきっかけになった(35.9%)」「志望度や志望順位が上がった(43.6%)」「企業に興味を持つきっかけになった(32.1%)」と少なく見積もっても視聴者の3割以上が動画の視聴によって応募・志望にプラスの影響があったと回答しています。その中でも「エントリーのきっかけになった」というのが30%を超えており、就職・転職活動におけるSNSの活用について調査でも「ショート動画等でのおすすめから志望企業になったことがある」という回答が50%となっていたことから、採用動画が応募者増という施策にも十分有効であると言えそうです。
一方で「志望度や志望順位が下がった(14.1%)」「エントリー予定だったがやめた(14.1%)」と少なからずマイナスの影響を与えているケースもあるようで、後述の設問での考察のようにコンテンツの中身やテイストなど、採用動画を作る上での見せ方にも注意が必要であると言えそうです。
志望度に関係なくプラスの影響が大きいのは「企業説明」
採用動画の内容について志望度別に就職活動への影響を聞いたところ、志望度が高い企業では、「仕事内容(55.1%)」「企業風土やカルチャー(51.3%)」「オフィス紹介、企業説明(同50%)」が志望に大きくプラスの影響を与えていることがわかりました。
一方、志望度が高くない場合には、「1日の流れやスケジュール(44.9%)」「社員インタビュー(42.3%)」「人事制度や福利厚生、企業説明(同41.0%)」という順番になっています。
このことから「企業説明」というコンテンツは志望度の高さに関わらず有用なコンテンツと言え、最優先で準備しておくコンテンツであると言えそうです。
動画のテイストで好まれるのは「脚色や演出が少ない演出」
採用動画のテイストによる志望度への影響を聞いたところ「親近感や親しみ」「誠実さや真面目さ」といった回答が好印象であったのに対し、アニメやコメディ、ドラマテイストなど、凝った演出や作られた台本に沿ったものについては、あまり好まれないという結果となりました。ドラマ形式やコメディ形式など過度な演出や脚色はマイナスの影響を与えかねず、制作する場合にはこのような影響を考慮する必要があると言えそうです。
逆を言えば求職者に求められている採用動画は、動画のために作られたものではなく「企業のありのままの姿」が見たいということであり、その中でも志望者に共感を得られるような親近感や、企業への信頼感が伝わるような映像が採用動画には必要であると言えるでしょう。
採用動画の視聴意欲が高まるのは「企業説明会応募後」
採用動画の視聴意欲が最も高まるのは「企業説明会の参加が決まったとき」であり、「見たいと思って実際に見た(43.6%)」「見たいわけではなかったが動画は見た(26.9%)」と、説明会応募のタイミングで約7割以上の求職者が実際に動画を視聴していることがわかりました。
しかしながら、この段階で21.8%もの求職者が「見たいと思ったが動画が見つからなかった」と回答しており、採用動画視聴の機会損失が生まれていると言えそうです。
企業説明会での内容を理解するために予習的な視聴をしている可能性があり、遅くとも企業説明会の開催タイミングと同時に求職者が採用動画を視聴できる環境を整えておく必要がありそうです。
タイパを意識するZ世代向けの採用動画は「アラカルト形式」
今回の調査をまとめるとタイパ(=タイムパフォーマンス。時間対効果)を重要視するZ世代の採用動画の視聴動向は以下の通りです。
- 企業説明会の応募段階、就活解禁日~説明会までに「企業説明会の予習を兼ねた動画視聴」を行っていると考えられる。
- 動画の内容は企業説明など一般的なもの以外にも、社員インタビューやオフィス紹介など、様々なコンテンツに反応を示しており、様々な動画が準備されている場合にはそれぞれのコンテンツで90%程度の応募者が視聴する可能性がある。
- 視聴時間については短尺のものが好まれており、理想を言えば1分、現実的なところでは3分未満に抑えることができれば55%以上の視聴者が見てくれる可能性がある。
- 動画のテイストはその企業のありのままを伝えることが重要であり、過度な演出は忌避される傾向がある。
このことから、採用動画は「すべてのコンテンツを1つの動画に収めるコース料理」のようなものではなく、「求職者が視聴したいものを選べるアラカルト形式」のほうが、オンライン上での採用広報を進めるうえでは非常に有用であると言えそうです。