生き残りをかけてファンを獲得する時代
現在のグローバル規模の熾烈なサービス競争の中では、一つの看板商品やサービスだけで生き残り、差別化し続けるのは難しくなってきています。
そのような状況において、多くの会社が「ロイヤルティ!」と連呼しながら、顧客との関係性を強化することに躍起になり、熾烈な「自社ファンの獲得合戦」が繰り広げられています。
そこで、最近では一時的なプロモーションに限らず、動画コンテンツを制作・活用し、他社と差別化しながら自社サービスの付加価値を高め、顧客の体験をより特別なものとする試みが数多く行われており、動画利用の裾野が急拡大しつつあります。
今回は、それらの代表的な事例を取り上げながら、欧米で浸透しつつある動画制作の内製化=インハウスビデオプロダクションについて紹介したいと思います。
動画コンテンツはどのように活用されているか
動画コンテンツ活用の代表例で、よくあがるのが小売ECのザッポスとPCメーカーのデルです。
ザッポスでは、自社のEC上に商品自体の試着動画や、商品の特徴を説明するプロダクトビデオを設置することで、顧客がネット上でファッションアイテムを購入するうえでの心理的障壁を低下させ、購買意思決定をより簡素なものへ導いています。
実際の数値でいうと、コンバージョン:6%~30%アップ、売上:20%~40%アップ、返品率:24%ダウンといった具合です。
動画コンテンツの適切な制作体制とは
また、デルの事例では、サポートページに大量のカスタマーサポート動画を設置することで、自力での課題解決をよりスムーズなものにしています。こちらも数字でいうと、5%のコール削減という直接的な結果が出ています。
インハウス運用におけるポイント
両者に共通していえるのは、実際に顧客の役に立つコンテンツを制作していることです。プロモーション動画のように一時的なアクせスや話題性を重視するのではなく、「必要なタイミング」で「必要な情報」を「必要な量」だけ提供してます。
そうすることにより、自社ブランドにおける体験をより特別なものとし、顧客との関係性を強め、最終的な自社製品の安定的な販売や自社サイトの利用頻度の向上へ繋げているのです。
インハウス運用が向いているもの、そうでないもの
ところで、彼らは一体この膨大な動画コンテンツをどのように調達しているのでしょうか?
答えは、自社です。
例えばザッポスは自社に専門の動画制作チームを設置し、45人体制で1日に60~100個の動画を制作しているといわれています。
現在では安価で高品質な撮影・編集機材が手に入る時代ですので、一定のノウハウや仕組み・社内ルール・人的リソースがあれば、ザッポスのようにそれを自社で賄うこともそれほど難しいことではありません。
その一方で、「一定のノウハウ」を得るためには、沢山のトライアンドエラーを繰り返す必要があり、前例がないことをやる以上、社内リソースの確保も非常に高いハードルとなることが想定されます。そこで、より具体的に内製化の方法を検討していくためには、以下の表に記載したようなメリデメをしっかりと認識し、そのうえで自社にとっての最適解を探っていく必要があります。
これと似たような話で、リスティングやSEOなどWEBマーケティングのアウトソーシングの議論がありますが、それらと同様に、動画制作においても、外注が良いのか・内製が良いのか、あるいは併用が良いのか、自社を取り巻く様々な内的・外的要素を加味して適切に見極める必要があるのです。
最後に
インハウス運用の成功可否を分ける最も重要なポイントは、「内製によるデメリットの最小化」です。
その「内製によるデメリットの最小化」において必須要件ともいえるのが、以下の3点です。
(1)利用シーンにおける最適な「シナリオフォーマットの策定」
(2)業務ボリュームを安定させるための「シンプルで効率的な業務フローの構築とマニュアル化」
(3)個の力に依存しない「高品質な映像テンプレートの作成」
これらの要件が満たされれば、クオリティを維持したまま業務がルーティン化されるため、先ほど挙げた内製によるデメリットの多くを払拭することができます。
しかしながら、これらの準備にあたっては、一般的な動画撮影・編集のノウハウは元より、流通しているハード・ソフト・サービスに対する知見や、効果的な映像フォーマット、WEBマーケティングに関する知識、業務フロー・マニュアルの構築など、多岐に渡るナレッジが必要になるため、何の経験もないスタッフが一からこれらの環境を作り上げるのは非常に難易度が高いといえます。
そこで、インハウス運用を行う場合オススメしたいのは、設計段階でなるべくプロのアドバイザーを入れるということです。必要に応じて制作環境の構築から、基本フォーマットの作成、撮影・編集の研修などをアドバイザーへ依頼することで、無駄なトライアンドエラーを削減し、効率的かつスムーズにスタートさせることが可能になります。
インハウス運用が向いているもの、そうでないもの
会社案内のように、数年に一度制作すれば事足りるものもあれば、商品動画のように更新頻度の高いコンテンツもあります。また、プロモーション動画のように高いクリエイティビティが必要なものもあれば、商品解説など決まったフォーマットで作成できるコンテンツもあります。
当然のことながら、可変要素が高く、高いディレクション能力やクリエイティビティが必要な動画を内製で進めるのは非効率的であり、現実的ではありません。
こういった動画の特性を加味して判断することも非常に重要なポイントになります。
最後に
一般的なコンテンツマーケティング同様、動画マーケティングにおいても、中長期視点を持って運用していく必要があります。そういったことを踏まえ、運用設計をするにあたっても、いずれ綻びが出るかもしれない付け焼き刃の運用でなかう、中長期的な運用を前提に、プロの手を借りながら無理のない体制を構築する必要があります。
また、目標設定するうえにおいても、単純に短期的なROIで判断するだけではなく、中長期的に自社で生み出した「動画という資産」を様々な部署で如何に有効に活用するかを徹底的に議論し、必ずその副次的効果にも注目するようにしてください。そうしなければ、動画制作という取り組みを正しく評価することはできません。
常に「お客さまのためになるコンテンツを作る」という視点を忘れず、動画をフル活用してあなたのビジネスを成功へ導いてください。