先日リリースした セルアニメ風ショートストーリー動画制作サービス 「スマービーAI」 。
今回は、Vコンテプランを活用したTVCMの制作を行いました。
本記事では、生成AIと手描きアニメを組み合わせた映像制作のプロセスを時系列で解説し、どのように30営業日で試写まで実現したのかをご紹介します。
CMの概要
このCMは、2025年3月より東北放送(TBS系列)で放映されている15秒のTVCMです。
産業用空調や電力管理の自動制御システムを開発・運用するシステム開発会社で働く女性社員が、初めて任された大規模プロジェクトの成功に向けて奮闘するストーリーを描いています。
短い尺の中でストーリーを伝えるため、手描きアニメとスマービーAIを活用した映像制作を採用。このアプローチにより、通常の制作期間(約3ヶ月)の半分の30営業日で試写まで完了しました。
制作期間の課題と解決策
見積制作段階で制作したビデオコンテ
本プロジェクトでは、限られた制作期間(30営業日)でCMを完成させるという大きな課題がありました。そのため、見積・工程表制作段階で制作側とクオリティの認識をあわせるためにビデオコンテのやりとりで作画強度の認識をあわせました。
このビデオコンテと同等クオリティを30営業日で実現するため、見積作成段階で以下の点を基本方針とすることが決まりました。
- プリプロ(企画段階)を10営業日以内に完了するため、コンテや中間成果物にAIを活用
- 社屋の背景や制服の再現は手描きで対応し、背景の一部は生成AIで補完
- Live2Dを活用し、中割りの工程を最小化
実際に制作された動画の各工程の中間成果物を見ながら、具体的な制作フローを解説します。
コンテ制作 – 生成AIによる迅速なビジュアル化
構成案の初稿は、着手日当日中に提出。この段階で、カット5・カット6の構図とカメラワークが決定しました。コンテの赤囲みをしたグラフィックが生成AIによる出力画像です。
従来のラフコンテ制作では、クライアントとのやり取りに時間を要しますが、生成AIを活用することで短時間で具体的なビジュアルを提示できるため意思決定が迅速化しました。
また、カット2・カット3についても、2営業日目にはほぼ決定稿に近い構図をAIで生成し、3営業日目には構成案がFIX。これにより、コンテ制作のスピードを大幅に向上させることができました。
さらに、生成AIを活用した背景画像のバリエーションを提案し、クライアントに選定いただくことで、デザインの方向性を短期間で決定することが可能となりました。今回は事前のヒアリングなどから4つに絞り込み、最終的には右上のオフィス画像を加筆修正しながら使うという結論になりました。
ビデオコンテ制作 – 生成AIによる高速プレビュー
制作開始から17営業日目で原画初稿が完成。
この間、生成AIを活用した背景の出力と加筆修正を組み合わせることで、作業の効率を最大化しました。
特に今回はLive2Dを活用し、中割りの工程を最小化したことで、原画の制作スピードをさらに向上させています。
24営業日目にはビデオコンテを提出、27営業日目に動画の初稿、30営業日目には試写を実施しました。
ビデオコンテでは、生成AIのImage to Video機能を活用しカットによってはほぼ納品版に近しい映像を生成。
ただし、生成AIの特性上、複数キャラクターに異なる演技をさせるのが難しいため、一部のカットは静止画で提出しています。
工程表から見えるスマービーAIの効果
今回のCM制作では、通常60営業日以上かかる制作工程を30営業日に短縮することを実現しました。工程表を振り返ると、スマービーAIの活用によって、どの段階で制作が効率化されたのかが明確になります。
- 着手から3営業日で構成案FIX – 生成AIによるビジュアル化で意思決定を迅速化
- 8営業日目に原画制作着手 – AI活用で背景選定がスムーズに。制作工程が前倒しに
- 17営業日目で原画初稿完成 – 生成AIにより構図が確定。書き直しリスクを最小化。
- 24営業日目にビデオコンテ提出 – 生成AIのimage to videoの活用で、短期間で映像化
- 27営業日目に動画初稿 – Live2Dを活用し、中割りの工数を最小化
- 30営業日目で試写完了 – AIのビジュアルコンテ活用により、最終仕上げまでスムーズに
このように、スマービーAIと従来の手法を組み合わせることで、短納期ながらも高品質なアニメCM制作が実現できました。
アニメ制作における生成AI活用のメリットと課題
本プロジェクトを通じて、スマービーAIビデオコンテプランの活用により以下のメリットが明確になりました。
生成AIを活用するメリット
イメージ共有の高速化
着手から3営業日でほぼ最終形のコンテを作成し、クライアントの意思決定が迅速に。従来のラフコンテと異なり、生成AIによるビジュアルコンテを活用することで、より完成形に近いイメージを共有できました。
工期の短縮
生成AIによる背景制作、ビデオコンテ作成、image to videoの活用により、通常60営業日かかる工程を30営業日まで短縮。特に中割り工程の最小化や背景作成の効率化が、スケジュール短縮に大きく貢献しました。
柔軟なデザイン調整が可能
従来のアニメ制作では、シーンごとの修正に時間がかかりましたが、生成AIを活用することで背景のバリエーションを短時間で生成し、クライアントに選定してもらうフローが可能になりました。
生成AI活用の課題
キャラクターの一貫性維持が難しい
生成AIはゼロから画像を生成するため、同じキャラクターの表情や細かいディテールを統一するのが難しく、今回のプロジェクトでは、最終的に手書きを前提としたワークフローであったため影響はありませんでしたが、今後さらなるAIの調整が求められます。
複数キャラクターの演技制御が困難
image to videoでは、複数のキャラクターに異なる動きを指定するのが難しく、一部のカットは静止画で提出しました。ストーリーによっては画角をうまく組み合わせることで一人ずつ演技をさせるなどの工夫が必要になってきます。複雑なシーンでは、AIの動き生成と手作業の組み合わせが必要になります。
完全な自動化は難しい
生成AIのみでTVCMを作成するには、キャラクターの再現性や細かい演技の調整が課題となります。そのため、現段階では手描きアニメーションとのハイブリッドな制作手法が現時点では最適なアプローチといえます。
スマービーAIのビデオコンテプランとは?
生成AIを活用した映像制作の新たな選択肢
スマービーAIのVコンテプランは、生成AIを活用し30秒分のビデオコンテを無償で提供するプランです。
コンペの段階でビデオコンテを活用し案件受注後に正式発注となる仕組みのため、クライアントにとっても制作側にとってもリスクを抑えながらスムーズに進行できるのが特徴です。
Vコンテプランの3つの強み
無償で30秒の生成AIコンテを作成可能
通常、コンペでの提案にはストーリーボードやラフスケッチなど、簡易的なビジュアル資料が中心ですが、スマービーAIのビデオコンテプランでは、生成AIを活用して実際の映像に近いビデオコンテを作成できます。
これによりクライアントは静止画ベースではなく、動画で完成イメージを具体的に確認できるため、受注確定前の段階でより具体的なフィードバックが可能になります。
受注後の制作スピードが飛躍的に向上
通常のアニメ制作では、受注後に「コンテ制作 → ビジュアルイメージのすり合わせ → 修正」といった時間のかかるプロセスが発生します。
しかしビデオコンテプランでは、コンペの段階で制作したビデオコンテをそのままベースにするため、受注確定後の作業の手戻りがほぼなく、制作期間を短縮できます。
例えば、今回のアルファス計装様のCMでは、
- 着手から3営業日でほぼ最終形のコンテを提出
- Vコンテによる早期のビジュアル確認で、意思決定がスムーズに
- 従来の制作期間60営業日を30営業日まで短縮
といった形で、実際の制作プロセスにも大きなメリットをもたらしました。
生成AIを活用したリアルなビジュアルコンテでコンペの勝率アップ
従来のコンペ提案では、静止画コンテ・ラフスケッチ・企画書のみで進行することが多く、クライアントは最終的な仕上がりをイメージしづらいという課題がありました。
しかし、ビデオコンテプランでは生成AIを活用した動画によるビデオコンテを提供できるため、より説得力のある提案が可能となります。
特に
- カメラワークやキャラクターの動きが伝わる
- 映像のテンポや構成を視覚的に確認できる
- 完成版に近いクオリティのビデオコンテを事前に提出できる
といった点で、コンペでの差別化に直結する強みを持っています。
生成AIによるアニメCM制作の新たな可能性
今回のTVCM制作では、生成AIと手描きアニメを組み合わせることで、通常60営業日以上かかる工程を30営業日で完了することができました。これは、スマービーAIの活用によるイメージ共有の高速化と制作フローの最適化によるものです。
プロジェクトの成功要因
特に、以下の2点が本プロジェクトの成功要因であると考えています。
生成AIによるイメージ共有の迅速化
従来のコンテ制作では、ラフ画をもとにクライアントとのすり合わせに時間を要しましたが、スマービーAIのビデオコンテを活用することで、より具体的なイメージを短期間で共有できました。これにより、着手からわずか3営業日でほぼ最終形の構成案を提示し、迅速な意思決定が可能になりました。
工期の短縮と制作の効率化
新たなワークフローを導入することで、通常の制作スケジュールを半分に短縮しました。
- 背景の一部を生成AIで作成し、手描きと組み合わせることで制作工数を削減
- Live2Dを活用し、中割り工程を最小化し、原画作業を効率化
- image to video技術を活用し、短期間でのビジュアルコンテ・ビデオコンテ制作を実現
ビデオコンテをベースに制作を進めることで、作業の手戻りを最小限に抑え、短納期での高品質な制作が可能となります。
今後の展望 – 生成AIとアニメ制作の融合へ
本プロジェクトを通じて、生成AIの活用がアニメ制作のスピードと精度を向上させることが実証されました。
一方で
- キャラクターの一貫性維持の難しさ
- 複数キャラクターの演技制御の課題
- 完全な自動化が難しい
といった生成AI特有の課題もあります。今後、技術の進化によって、
- キャラクターのデザイン統一の向上
- 複雑な動きや演技の制御の精度向上
- AIと手描きを組み合わせた最適なハイブリッド制作フローの確立
といった解決策が期待されます。
生成AIで映像制作の未来を加速
スマービーAIは、アニメCM制作の工期短縮だけでなく、コンペでの勝率向上、制作段階の効率化といったメリットを提供する新たな映像制作ツールです。
- 生成AIと手描きアニメの融合による短納期・高品質な映像制作
- ビジュアルコンテによるスムーズな意思決定
- Vコンテプランによるコンペの成功率向上と受注後のスムーズな進行
今後も、スマービーAIは生成AIを活用した新しい映像制作の形を提案し、映像クリエイティブの可能性を広げていきます。
「スマービーAI」で、映像制作を次のステージへ!