会社などで報告や発表、プレゼンをする機会は多くあると思います。そんなとき、話す内容は事前に準備していますか?
動画制作の台本・シナリオ作りはプレゼンの原稿制作にとても良く似ています。今回は、動画制作での台本作りの流れをご紹介します。
会社などで報告や発表、プレゼンをする機会は多くあると思います。そんなとき、話す内容は事前に準備していますか?
動画制作の台本・シナリオ作りはプレゼンの原稿制作にとても良く似ています。今回は、動画制作での台本作りの流れをご紹介します。
動画制作の目的ってどのようなものが多いのでしょうか。もちろん、啓蒙や認知向上のため「知ってもらう」という目的の動画もあります。しかし、ビジネスで使われるほとんどの動画は、視聴者に「何かしらの行動をしてもらうため」に使われます。例えば展示会やWeb掲載の動画は、視聴者を足止めし、滞在時間を稼ぐことが目的であることが多いですし、広告動画は言うまでもなく購買やダウンロードといったアクションを目的としています。
ビジネスで使われる動画は行動変容、つまり「視聴者に何をしてもらいたいか」を目的としているので、会社等で行われるプレゼンテーションと構成が非常によく似ているのです。
分類 | 自身がやるべきこと | 聞き手に求めること |
報告 | 事実・状況・所感などを聞き手に伝える | – |
発表 | 事実・状況・所感などを聞き手に伝える | 理解してもらう/フィードバックをもらう |
プレゼン | 事実・状況・所感などを聞き手に伝える | アクションを起こしてもらう |
それでは動画とプレゼンの違いはどんなところにあるのでしょうか。もちろん、話し手や聴衆の有無、使われるソフトの違いなどはあるかと思います。しかし、プレゼント動画は特性として決定的に違う点が2つあります。
人が話すプレゼンでは、プレゼン中70~80%程度は話し手に視線が送られると思います。そのため、映し出されるプレゼンテーション資料は、話し手の内容の補足として作られていることが多いかと思います。話し手への視線がメインとなるため、プレゼンテーション資料は細かい文字や、画面を凝視しなくてはならないコンテンツなどは敬遠されます。その分、プレゼンテーションでは話し手の説明力や表現力に重きが置かれます。
一方で動画はどうでしょうか。もしも、会場に人を集めて「動画だけでプレゼン」したらどうなるでしょうか。おそらく100%の聴衆が、画面を凝視ことになると思います。つまり、動画は動画だけが視聴者への情報量の全てであり、「画面に描かれるもの」と「ナレーション」だけですべてを表現しきらなくてはなりません。
ほとんどの場合、プレゼンテーションでは制限時間があります。しかしながら、話すスピードを変えたり、間を取ってみたり、プレゼンは聴衆の状況に応じて説明する内容の重みづけを変えたりすることはできます。
しかし動画はどうでしょうか。視聴者の様子を見ながら間を変えたりすることはできません。また、画面に映る情報のみが視聴者に与えられるので、ナレーションが止まったり、画面が止まってしまうという間の取り方は、視聴の離脱につながりかねません。
一方通行のプレゼンテーションとも言える、動画は視聴者の心理を想定し、綿密な台本設計が必要になってくるのです。
このように、人が行うプレゼンテーションとビジネスで使われる動画には多少違いはあるものの、「聞き手にアクションを起こしてもらうこと」という目的は同じです。そのため、まずは聞き手が理解しやすい話の流れを作る点ではプレゼンテーションも動画も変わらないのです。
私達、動画制作会社が「視聴のターゲット層は?制作の目的は?」ということをよく聞きます。それは「どんな人に動画を見てほしくて、視聴者にどんなアクションを起こしてほしいのか」という、プレゼンの目的や聴衆を聞く行為に他ならないのです。ですので、ビジネス動画制作ではプレゼンを作るのと同じように最初に「聞き手に取ってもらいたい行動を伝えるための話の構成・話す順番」を作ります。話を理解してもらうための代表的な構成のフレームワークは以下のようなものです。
構成名称 | 論理展開 | 特徴 | 動画での使われ方 |
PREP | Point/Reason/Example/ Point | 先に結果を伝え、その理由、具体例、改めて結果を伝える。理由や根拠が重要な報告で使われやすい。 | 比較検討ツール |
IREP | Issue/Reason/Example/Point | 問題点・論点をつたえ、それが問題点になる理由、具体例、そのうえで「どうしたいか」の結論を伝える。悩み・ペインに対する課題解決を提案するときに使われやすい。 | 展示会、Web掲載 |
DESC | Describe/Express/Suggest/Consequence | 状況、環境や心境を伝え、相手にどのような行動をとってほしいか(もしくは自分自身がこうしたい)を伝える。 | 展示会、Web掲載 |
それでは実際の事例を交えながら、この「動画シナリオの構成」を見てみましょう。
PREPは結論から入る展開です。プレゼンの場合、シンプルなためとても使い勝手が良いのですが、ビジネス動画でこのフレームワークを使う場合には1点注意が必要です。それは、社内や取引先など、扱う話題についての前提知識を持っている相手に対してのみ使える手法ということです。
動画でこのフレームワークを使う場合には、問い合わせ以降の比較検討やクロージングに使う営業ツールとして使うケースで、このフレームワークで台本を構成します。具体的には以下のような事例で活用しています。
こちらはナレーションがない動画ですが、展開としてはPREPの手法を使っています。業界内ではトップシェアを誇る会社が営業ツールとして使う動画として作っています。「研修会の案内→お勧めの理由3つ→理由の詳細やアンケート→研修に申込誘導」というPREPの構成そのままを使っています。
こちらも業界内で非常に高いシェアを持つ光学顕微鏡システムの営業ツール動画です。研究者などリテラシーが高い相手への営業ツールのため、2つのユニットをそれぞれPREPのフレームワークで説明しています。
一見PREPに似た展開のようですが、大きく違うのは「問題点を提示する」というところからスタートするのがこのIREPというフレームワークです。「実は困っているんだけど、その原因が分からない」「当たり前だと思っていたけど、実は違った」といった気付きを与えることがIREPの特徴です。
この構成の良い所は、初見の方やこれまでまったく縁のなかったような、「潜在ニーズの探索」に向いているフレームワークということです。そのため、展示会や動画広告など、比較的、購買行動プロセスの手前側のシーンでの活用に適しています。
冒頭3秒でマーケティング・システム担当者のアプリ開発に対する課題や問題点を提示し、サービスの概要を15秒で説明、その後具体的な10以上の機能をナレーションすることで、顧客に引っかかりを覚えてもらうことを目的としています。
悩み・ペインをいくつかばら撒きつつ、起きがちな問題をクローズアップしています。その後アプリの使い方・機能のシンプルさを伝え、課題の解決が実現できることを伝えています。
起きている事実を伝え、こう感じてしまう・こういう原因があるということを伝えた上で、解決策を提案する方法です。起きている事実から、自分の考えを伝えたり、相手にも選択肢を与えたり、相手自身の行動を考えてもらうなど、アサーティブ(自分も他人も尊重する)な構成になります。
この構成のポイントは、起きている事実(もしくは起きえること)をちゃんとキャッチアップしているかとい点にあります。また、事実説明に重きを置いているので、動画制作の現場では、教育コンテンツやオウンドメディアからの導線づくりなどで使われます。
一見、冒頭で悩みの提示をしているように感じるかもしれませんが、「サイバー犯罪が増えている」という事実とその原因、解決策として製品を案内しています。DESC法の特徴として「聞き手に考えてもらう」という特徴があり、その特徴がシナリオに出ています。
事実を述べつつも、ミツバチの視点での主観的な感情や原因を伝えるという、DESC法を使いながらも「ミツバチ視点」という少し異色の構成を取っています。マクロでの環境問題・環境に対する取り組みの歴史を伝えつつ、個人個人が何ができるかを考えさせる構成になっています。
構成が決まると、動画としての流れが決まります。しかし、尺によっては単純な構成だけでは視聴者の興味を維持できません。そのような場合には
・構成を多重化する:事例のタイミングでさらに物語形式のものを追加する等
・チャプターに分ける:内容ごとに小分けにして、1動画あたりの情報量をコントロールする。
などが取られます。また、プレゼンのテクニックで本論に絡めたアイスブレイクを入れるように、動画内にちょっとした「仕掛け」を入れて興味を維持する演出が取られることもあります。下記の事例はそんな「視聴の興味を引く演出」の事例です。
保険募集代理店向けに意外性のある研修をしたいと制作しました。予告編と本編を作るとのことで、予告編では壮大なヒューマンドラマを匂わせつつも、本編はどちらかというとコメディタッチで進行するという構成上の仕掛けを入れています。
アニメ動画故にできる演出として、フィクションやディフォルメを最大活用する、というものがあります。この動画では、アプリ名を叫んでいる間に痩せる・筋肉がつくという、現実ではあり得ない誇張されたスピード感を演出に入れています。