人工知能で動画マーケティングはどこへ向かうのか?

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昨年は、Googleの「AlphaGo」が、韓国のプロ囲碁棋士李世乭に勝利したり、人工知能による短編小説が「星新一賞」の一次審査を通過するなど、人工知能関連のニュースが盛り上がりました。

自動車やロボットだけでなく、金融・アドテク・医療・CS・流通・農業など、我々の生活を取り巻く様々な産業分野において、その活路が見出されようとしています。

そういった環境の変化の中で、動画マーケティングについても、今後様々な変化が発生すると予測されます。今回は、今後人工知能が、動画マーケティングにおいてどのような場面で活用されていくのかについて書いていきたいと思います。

動画コンテンツの課題はどこにあるのか?

動画マーケティングにおいて、人工知能は具体的にどのような活用方法が考えられるのでしょうか。はじめに、現在の動画コンテンツの課題や非効率性はどこにあるのか、視聴者・事業者それぞれの目線で考えていきたいと思います。

まず、視聴者側が抱える動画コンテンツの課題としては、タイトルや説明文だけでは動画の中にどのような情報が含まれるかが分からない、すなわち検索性が低いということがあります。これらを解決するうえでの課題は、動画内に含まれる音声であったり、画像の内容であったり、そういった情報を認識・識別し言語化することです。

次に、動画を活用する事業者側の視点で考えてみます。動画の制作から配信までの基本的な流れは以下のようになります。

動画制作の流れ

①プリプロダクション(企画構成)で必要とされるのは、効果を高めるための企画や演出の立案、②や③の制作フェーズでは、制作の各工程の効率化・簡素化によるコストの圧縮、④の配信においては、広告(ターゲット・面・コンテンツ内容)の最適化・効率化などが求められます。

それでは、これら使い手と作り手の課題が、人工知能によりどのように解消されていくのかを考えていきたいと思います。


Ⅰ.動画の文字情報化と検索利便性の向上

課題でも挙げた「動画コンテンツの言語化」。これを実現する方法として、2つのアプローチが考えられます。1つ目は音声認識と言語処理・2つ目は画像認識です。

1つ目の音声認識については、これまで難易度が高い研究ジャンルと言われてきましたが、GoogleやAmazon、MicrosoftやAppleなどのリーダー企業のリソース投下や、ビッグデータ・GPU・Deep Neural Networkの進化によるディープラーニングの技術革新により、認識精度が飛躍的に進歩しています。

2016年10月には、Microsoftの研究チームが開発した音声認識システムが、ワードエラーレート(誤認識率)5.9%を達成したという研究成果が発表されました。この5.9%という数値は、人間の耳と同等かそれ以上のレベルということです。

Microsoft says speech recognition technology reaches “human parity” – CBS News


米カリフォルニアのスタートアップLexikaが提供する「Deepgram」では、動画の中の音声を解析し、特定の単語が出現する箇所を検索できるサービスを提供しています。こういったことが可能になれば、コンテンツホルダー・視聴者双方へのメリットがとても大きくなります。

Deeepgram

Deepgramのデモ画面

2つ目の画像認識の領域においても技術の進化は進んでおり、画像だけでなく動画の領域でも人工知能をビジネスに応用する動きが徐々に広がってきています。これまで動画解析の分野は、監視や保守管理系を扱う事業者の領域というイメージがありましたが、これからはもう少しカジュアルな場面でも活用されていくと考えられます。

昨年秋に3000万ドルを追加調達した米ニューヨークのスタートアップ「Clarifai」では、動画の中にどのような情報がどれくらい含まれているのかを、メタタグやグラフで可視化できる、ディベロッパー向けのサービス提供を行っています。

Clarifai
Clarifiのデモ画面
これにより、コンテンツ所有者はコンテンツにタグ付けしたり、分かりやすく整理分類することが可能になり、ユーザーの利便性が向上します。

また、音声・動画像の両面から、動画内にどのような要素が含まれているかをデータ化することで、プレロールやミッドロール広告に最適なクリエイティブを導き出すことも可能になると考えられます。


Ⅱ.ストーリー(シナリオプロット)の作成

次に、考えられるのが「①ブリプロダクション」における人工知能の活用です。

昨年、IBMのWatsonによるホラー映画のトレーラーや、マッキャンエリクソンの人工知能「AI-CDβ」によるWEB CMのクリエイティブディレクション、クラウドファンディングにより実現した人工知能によるによるホラー映画制作など、クリエイティブ領域における人工知能の創作活動が話題になりました。これらは共に、過去の動画作品のデータを解析させ、プロットやクリエイティブの方向性を人工知能により導き出すというアプローチをとっています。

<IBmのWatsonによるホラー映画のトレーラー>
Morgan | Official Trailer [HD] | 20th Century FOX

<人工知能「AI-CDβ」によるWEB CMのクリエイティブディレクション>
クロレッツミントタブCM「都会」篇 |クロタブ スッキリCM国民投票 人間vs人工知能

<クラウドファウンディングにより実現した人工知能によるによるホラー映画>
Impossible Things teaser trailer

冒頭で触れた人工知能による短編小説同様、詳細設計は人間が手を加えなければならないという課題があるものの、人工知能はデータに裏打ちされたロジカルなクリエイティブディレクションができるという可能性を感じさせるものでした。

現状は、動画自体を細かい要素に分解して学習させるという部分がボトルネックになっており、詳細なストーリーや演出まではハンドリングすることができませんが、認識技術の向上により学習効率が上がれば、いつの日か人工知能だらけのスタッフロールを拝む日がくるかもしれません。

Ⅰ.動画の文字情報化と検索利便性の向上」で書いたような、動画像や音声の認識技術が進化していくことで、世の中の無数の動画コンテンツは、コンテンツ自身を構成する要素の情報を持てることになります。これにより、動画コンテンツが持つ大量の要素データをディープラーニングで学習・解析することができるようになるため、よりロジカルで精度が高いクリエイティブの実現に近づくことができます。


Ⅲ.制作・クリエイティブ補助

プリプロダクションなどの制作フェーズにおいては、しばらく人工知能と人間の共創が続くと思いますが、人工知能の進化により、これまで実現できなかったようなクリエイティブが制作できたり、制作工程が簡素化する可能性はあります。

既に画像処理のジャンルでは、モノクロ画像をカラー画像に加工したり、あるクリエイターの作品を学習し作風を真似た効果を自動でつける、対象物の輪郭を認識して切り抜きを補助するなど、人工知能を活用した様々な編集技術が現れてきています。

マサチューセッツ工科大学の研究チームでは、静止画の要素を読み取り、その要素の「動きモデル」を用いて、その要素らしく動かすことで動画化する技術を発表しています。まだ実用化にはほど遠いもののの、それなりに上手く動いているものもあり、かなり驚かされます。


Creating Videos of the Future

今後、更に画像認識の技術が上がっていけば、動画編集の世界においても、高度なマスク処理や合成や色補正など、これまで膨大な手間や時間がかかっていた工程が効率化していくと考えられます。

例えば、Adobeのツール「Character Animator」では人工知能「Adobe Sensei」の顔認識技術により、人間の唇の動きをキャプチャーしてキャラクターのリップシンクをリアルタイムで可能にしています。


Character Animatorのデモ

また、人気動画編集アプリ「Magisto」では、人工知能による編集機能により、使用したいクリップを選ぶだけで、音楽に合わせたカット編集やトランジションなどが自動で行われます。昨年販売開始したアクションカメラ「Graava」では、撮影した動画内の動きや音声や加速度計・GPSデータなどを用いて、撮影動画から面白いシーンを自動で抽出してくれる機能が備わっています。


Graavaの紹介動画

台湾のGliaCloudが提供する「GliaStudio」では、アップロードしたファイル、または貼り付けたURLのテキスト情報を自然言語処理によりスキャンを行いスクリプトを生成したのち、関連するうイラスト・コンテンツを収集し、ダイジェスト動画を自動生成してくれるサービスを提供しています。

ニュース速報をはじめ、Eコマースや商品紹介など、今後様々なジャンルでの活用が期待されます。複数バージョンによるA/Bテストや動画視聴状況のトラッキングに基づく最適化など、かなりてんこ盛りなサービスとなっています。


GliaCloudによって作られたサンプルムービー(オンラインゲーム広告)

このように、制作工程においても人工知能による作業の効率化や簡素化などが進んでいく可能性があります。そのうちフッテージを放り込めば、カット編集だけでなく、合成、グレーディングや音源作成まで、全て自動で行ってしまうようなツールが出来てしまうような世界が訪れるかもしれません。


Ⅳ.マーケティング・広告最適化

アドテクやマーケティングのジャンルにおいては、既に人工知能・デイープラーニングを取り入れた様々なサービスが出てきています。

国内においても、大手からスタートアップまで、広告の入札戦略・予算配分などの最適化や自動化、MAやLPO、WEB分析や接客など、実に様々なジャンルのサービス開発に取り組んでいます。

制作側をカバーするテクノロジーに、視聴率や視聴者の行動予測が加われば、視聴者の属性や反応によって動画構成自体を組み替えたりしてしまうようなツールも出来上がってくるかもしれません。

既にWEBサイトの領域では「The Grid」というサービスが存在し、このサービスにおいては利用者がカラーセットを決めてテキストや画像素材をアップするだけで、WEBサイトを自動生成することができます。更には、自動生成したサイトをユーザーのアクセス行動に合わせて最適化していくという自動グロースハック機能まで備えています。


The Gridの紹介動画


終わりに

人工知能を利用した動画周りのサービスや取り組みについて色々と紹介してまいりましたが、いかがでしたでしょうか。どれもとてもワクワクする未来を感じるものでしたね。

クリエイティブ領域もいずれは人工知能に代替されるというような論説もありますが、クリエイティブ側にいる人間は、普段から自分の周りで発生している事象や事柄に、人工知能をどのように利用していくか・使いこなしていくかを常に意識することが重要になってくると思います。

今後、益々盛り上がってくる領域ですので、引き続きウォッチしていきたいと思います。

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著者について

TAKAJUN

Smarveeディレクター。 動画TIPS・ハウツー情報を中心に投稿。 犬が好き。