実写とアニメの制作費用はどれくらい?知っておきたいお金の話

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前回、ビジネスシーンで動画を活用したい場合に、アニメーションと実写の表現特性から、どのように絞り込めばよいかを考察しました。しかしながら、ビジネスでの動画活用で必ず考えなくてはならないのは「制作費用」の問題です。2回目となる今回は「費用面」でどのような影響があるのかを考察したいと思います。

動画制作依頼でありがちなコト

実写かアニメかを先に決めたうえで見積もりを出してしまうとどうなるでしょうか?

・実写/アニメの選択肢をベースに制作会社が見積もりを出してしまうため、最適な手法であるかどうかがわからない。
・動画を作る元々の理由や課題から離れて、価格中心の見積もりを出してしまい、そもそもの目的を達成できない。

実写にしろアニメにしろ、制作費用は「クリエイティブの作りこみ次第」で大きく変わります。そのため、動画制作にあたっての制作費用の適正具合を見るためには、大抵の場合、実写かアニメかの方向性を自社で決めたうえで、ある程度の要件をまとめてから、いくつかの制作会社に見積もりを出して、その費用を比べてみるという進め方が大半です。

しかしながら、前回の「もう迷わない!?アニメと実写を選ぶ6つの判断ポイント」でも書いた通り、動画制作の検討段階からアニメと実写の特性を知っておくことで、ビジネスシーンで使いやすい動画を制作することにつながります。

その場合、自分たちで制作要件を先に決めてしまうことは、費用面の適切さの評価が難しくなるだけでなく、本来実現したかった目的とも乖離が起きてしまうことも多くなります。

動画を作るときに考えるバランス
制作目的や元となる課題がわからない制作与件は結果的な満足度が低くなる傾向にあります。

こうならないためにも、動画表現上の特性だけでなく、費用がどのように発生するのかを知っておくことで、得たい効果を前提とした動画制作が可能となります。


アニメーション動画制作の費用構造

近年、WEBやデジタルサイネージなど30秒~2分程度の動画では、キーフレームアニメーションによるものが増えてきています。キーフレームアニメーションでは、動画内のオブジェクト(イラスト素材等)の開始点と終了点のイラストの形状変化を定義することで、その中間部分を自動生成する方式です。キーフレームアニメーションは「動きの複雑さ」と「シーン数」により費用が決まってきます。そのため、下図のパターン3のようなアニメーション動画制作では、費用を安く抑えることができます。

キーフレームアニメーションの制作と費用の関係
キーフレームアニメーションは単位尺あたりの「動きの複雑さ」と「シーン数」で費用が決まってきます

一般にキーフレームアニメーションは、シーン数が増える、つまり動画尺が伸びるほど、費用がかさんでいきます。つまり、アニメーション動画の制作では、アニメーションを複雑にしたり、尺やシーンを追加するなどにより変動費部分が制作費用に大きく影響してきます。


実写動画制作の費用構造

次に、ビジネス用途では会社案内動画などでよく使われる実写動画では、数分~10分といった尺の動画が比較的多くみられます。実写では、台本制作やロケ地調整・キャスティングなどのプリプロダクションと呼ばれる企画段階、カメラ・照明・音響・キャストなどによる撮影段階、その後の編集やナレーションなどポストプロダクションと呼ばれる編集段階の3つの工程に分かれます。

動画制作の3つの段階
撮影段階で多くのスタッフが動くため、それまでのプリプロダクションは十分な準備が必要です。

実写ではこれらの工程それぞれに専門のスタッフが担当するケースが多く、また調整業務が多く発生するため、1日工数単位での費用見積もりや、制作規模に応じた固定的な企画費用で算出する方法が取られます。もちろん、クライアントが要望する予算感や費用感によっては、ディレクターが脚本を兼任したり、編集を行ったりすることで、この固定的な費用を削減する方法もよくとられます。

しかしキーフレームアニメーションと違い、実写では上記のような「兼任」以外にも、「どうやって効率的に撮影するか」により固定費用の内数で、動画のクオリティーを上げることが可能になります。例えば、効率の良いシーン撮影手順を組むことで、ぎりぎりまで役者さんの演技をリテイクすることや、移動時間を踏まえたロケ地選定や撮影スケジュールの設定などで、密度の高い撮影を行うなど、業務の密度をあげることで、費用を大きく変えることなくクオリティーを上げることが可能な場合があります。

業界内では最終的な映像で利用できそうな撮影素材料を「撮れ高」といった表現を使いますが、特に撮影工程では、工夫次第で「撮れ高」を効率よく収録することが可能なのです。つまり、アニメーションに対し実写では、制作に掛かる固定費部分が大きい一方尺の概念だけでは変動費が増えないのです。


費用の分岐点

とはいえ、これらの分岐はどのあたりで発生するのでしょうか。
一概には言い切れない部分ではありますが、費用でいえば50万~70万円程度で、製作費の分岐点が発生するケースが多くあるように思います。
比較的費用構造のわかりやすいアニメーションについては、概ね映像尺に比例しての費用が発生します。一方で、実写の場合には、特に撮影段階で「1日単位で撮影可能な撮れ高」に大きく影響します。搬入~搬出、準備、実写でメインとなる収録、インサート用の物撮りなどを考慮すると、1日撮影での成果物(撮れ高)のを基準にすると概ね50~70万円程度が最低ラインになってきます。

アニメと実写の制作費の関係
動画の想定尺を5分を超えたあたりから、撮影日程が増加する可能性が出てきます。

 

実写とアニメの費用の比較

前述までの内容を踏まえ、この2つの動画制作手法をコスト面で並べた場合、一般的に以下のように言うことができます。

アニメーション制作と実写制作の費用の割合例
アニメーション制作と実写制作の費用の割合例

もちろん、アニメーションでも、コマ撮りによるものであったり、有名な作画監督を入れたりなど、こだわり次第では固定費にも影響しますし、実写においても、ロケ地数が多く撮影日程が収まりきらない場合などは上記の限りではありません。しかしながら、一般的な動画制作においては、この関係性は多くの場合成り立ちます。「クリエイティブの作り込み次第」といわれるものは、これらの変動費用をどのようにコントロールするかによって、アニメのほうが高くなったり、実写の方が高くなったりすることから言われている言葉なのです。


まとめ

今回2回にわたって、アニメと実写の実務的な違いをまとめました。
「どんなものを制作して誰に伝えたいか」「どれくらいの費用で収めたいか」というのは、マーケティング施策などを立案するうえで大事なポイントになります。
どちらかが抜け落ちたまま施策立案を進めてしまうと、専門家への依頼の段階で「アニメか実写か」を決めきってしまうことで想定した施策に不向きであったり、予算ありきで依頼することで「予算合わせの提案」から選択することになったりする場合があります。

動画マーケティングをお考えの皆さま、是非参考にしてみてください。


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